企業で起こる不正③
福岡雄吉郎です。
今回は、地方の建設会社で起こった、
在庫に関する不正を紹介します。
その建設会社では、鉄筋や鉄骨を商社から仕入れますが、
その加工は専門の加工業者に依頼していました。
鉄筋や鉄骨を仕入れる際、万が一、不足した場合に備えて、
仕入担当者が、少し多めに発注することがありました。
で、加工業者が鉄筋や鉄骨を加工すると、
その念のために発注した分が、余ります。
余った分は、現場所長の判断のもと、
鉄くずとして金属会社等に売却していました。
その際、売却代金は、本来、会社の収入(原価戻し)として、
経理処理されなければなりません。
しかし、その会社では、実際に経理処理は行われませんでした。
現場所長が、鉄くずの売却代金を、下請業者等との
飲食費に使ってしまったのです。
つまり、本来は会社の在庫として認識すべき
鉄くずを、勝手に換金して、帳簿外で使ってしまったのです。
経理部門はその分を、そのまま原価として計上しています。
建設会社にとっては、かき集めた下請業者を束ねて、
いかに、円滑に作業を進められるかが重要です。
「下請業者に円滑に作業を進めてもらうためには、
親睦を図ることも大切であって、その為のお金が必要だった。」
という勝手な理由で、上記の不正(鉄くずの横領)が行われたのです。
このような不正が発生しないようにするためには、
(1)現場長に対する利益率責任を明確にすること
(着工時の予想利益率と完成時の利益率の比較など)
(2)利益率を工事ごとに、月次で把握し、
前月実績や他工事との比較を行うこと
(材料費、労務費、経費別に行う)
(3)作業くずの売却先は、会社が指定し、
売却代金は現金ではなく、会社の指定口座に振り込ませること
(4)製造の過程で生まれる「作業くず」は、
当然に「会社の資産」であることを、現場に徹底的に認識させること
(5)作業くずや資材の余りがないかについて、
実際に製造現場を定期的にまわって、観察すること
などが対策として考えられます。
今回の場合、鉄くずの売却代金を経理処理していれば、
現場の利益率は改善されていました。
現場長に対する利益責任を厳しく行っていれば、
当然、利益率を改善しようとする意識が高まります。
結果として、今回のような不正を防止できる確率が高まります。
原材料や資材はお金が姿を変えたもの、という認識を持ち、
現場で横領されていないか、という観点から、
チェックできる仕組みを整備し、運用することが重要です。
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