減らない固定資産
福岡雄吉郎です。
前回は、固定資産の実査について紹介しましたが、
固定資産台帳の減価償却費をチェックすると、
エラーを発見することがあります。
多くの企業は、固定資産をシステムで管理しています。
新たに資産を取得した場合は、
名称、金額、日付、耐用年数などを、システムに登録します。
登録されたデータに基づいて、自動的に減価償却額が計算されます。
登録の際、耐用年数を間違って入力する、または、
意図的に長く設定している企業があります。
耐用年数が長くなれば、減価償却費は少なくなります。
あるいは、システムには正しい情報を登録しているのに、
決算書だけ、減価償却費を少なくしている企業もあります。
ある農業メーカーの子会社A社では、利益確保に対して、
親会社から強いプレッシャーがかけられていました。
そうしたなか、親会社で新設された、内部監査部門のメンバーが、
子会社監査の一環として、A社の決算書一式をチェックしました。
すると、
・P/Lと固定資産台帳上の減価償却費が整合していない
・システムに登録されている耐用年数が、異様に長い
ことが分かったのです。
この子会社では、利益をかさあげするために、
長年にわたり、減価償却を少なく計上していたのです。
子会社の社長は、業績(利益額)により評価され、
役員報酬も評価によって変わってきます。
自分の報酬を確保するために、水増しを行っていたのです。
減価償却費は、帳簿上で計算されるだけで、
実際に現金が出ていくことはありません。
だから、比較的操作がしやすい科目なのです。
この子会社のように意図的でなくとも、
システムに登録する基礎データが、
間違って登録されている場合もあります。
誤ったデータがシステムに登録された場合は、
その後はずっと、減価償却費が間違って計算されてしまいます。
減価償却費が少なく計上されると、
利益が増えるため、税金を多く払うことになります。
このため、税務署は、まず何も言いません。
ここ数年、固定資産台帳をじっくり見たことがない、
という企業は、固定資産台帳の登録データを、
チェックされてはいかがでしょうか。
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