有価証券の簿外取引②
福岡雄吉郎です。
前回は、3月決算の会社が、証券会社から残高証明書をとったら、
不正が発覚した、という話でした。
経理部長は、社長に内緒で「信用取引」を行っていました。
信用取引は、証券会社に対して一定の証拠金を積んで、
その何倍もの規模の株式を借りて、売買するという取引です。
ハイリスク・ハイリターンといえ、投資というよりは投機です。
不正発覚時点で、損失額は経常利益の3年分に膨らんでいました。
調べると、経理部長は信用取引の口座を、
社長に内緒で勝手に開設し、取引を行っていました。
ここで、疑問が2つ浮かびます。
①なぜ、不正が行えたか?
②なぜ、気づかなかったのか?
①経理部長は、前社長時代から部長を務めていました。
社内の信頼は大変厚く、印章管理は部長に一任されていました。
そのため、簡単に契約(取引口座の開設)ができたのです。
経理部長は、ギャンブル好きな一面はありましたが、
普段の仕事はしっかりこなしていたため、
まさか裏で不正を行っているとは、誰も思いませんでした。
②今回は、社長宛の郵便物に注意すれば、気づけました。
証券会社と取引を行うと、その都度、証券会社から
「取引残高報告書」が送付されていました。
しかし、経理部長は、これが社長に渡る前に回収していました。
だから、社長は不正取引を知るよしもなかったのです。
経理部長の机を調べると、直近の報告書が隠されていました。
こうした不正の対策としては、
①印章管理
・実印は社長が管理する
・手提げ金庫のなかに、小さな印鑑箱を入れ、
それぞれのカギは別々の人間に管理させる
・実印と印鑑証明書は、別々に保管する
・検印簿を作成して、複数の社員で運用する
②郵便物の取扱い
・社長宛の郵便物は、総務に封を切らせる
・開封物は、必ず社長のもとに届けさせる
③残高証明書の取り寄せ(1通1000円程度)
などが、考えられます。
経理部長いわく、
「最初は利益をあげていたが、途中から損失に変わった。
損失を取り戻そうとしてから報告しようと思ったが、
損失は膨らむばかりで、告白するタイミングを失ってしまった。」
印章管理や郵便物の取扱いについて、
一度、確認されてはいかがでしょうか。
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