不動産鑑定士はどなたですか?
ある企業での、税務調査の際のことです。
その企業では、オフバランスをするべく、
土地売却の案件が進んでいました。
調査対象期間以降の売却実行でしたが、
その土地の不動産鑑定は行われていました。
しかも調査員たちは、どこから聞いたのか、
土地売却の事を知っていました。
“土地の不動産鑑定書を見せていただけますか?”
となりました。
で、見せたところ、その鑑定価格を真っ先に見て、
“ずいぶん低い価格になっていますねぇ・・・?”
と、言われたそうです。
要は、土地を意図的に低く鑑定して、
多額の売却損を計上しようとしているのではないですか?
との含みがあるわけですね。
“いったいどなたが鑑定されたのですか?”
となり、鑑定書の後ろの部分を見せながら、
“〇〇先生です”と、経営者が言いました。
すると、調査官の様子が一変し、
“あぁそうですか。それなら間違いありませんね。”
となったのです。
なぜだと思いますか?
同席した税理士先生は逆に、
“どうしてですか?”と尋ねたそうです。
すると、
“この先生は、
〇〇市の固定資産税評価委員のメンバーなんです”
とのことでした。
そうです。
今回の不動産鑑定士は、
その税務署の管轄エリアの固定資産税評価委員会の、
ひとりだったのです。
なので、
“その方の鑑定はおかしいんじゃないですか”
と、言いようがなかったのでしょうね。
結局、不動産鑑定をしてもらうにしても、
どう鑑定したかより、誰が鑑定したのか、
が、税務調査では力を発揮することがあるのです。
やはり、調査官も、人間なのです。
結局、その鑑定は、
行政が不動産売買をした事例に沿って、
算定したものでもあり、一切問題になりませんでした。
不動産売却によるオフバランスを進める際、
鑑定士がそのような立場の方だと、
なお有利であるということが、
はっきりした出来事だったのです。
(古山喜章)
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