お気に入りの一本 ②
②赤ひげ
黒澤明監督作品はどれも好きなのですが、
なかでも大好きな作品のひとつです。
江戸時代の、小石川養生所が舞台です。
貧しい暮らしの方々のための、
お上が経営する無償の診療所です。
今で言う、地域医療の原点のようなものです。
そこには、通称〝赤ひげ〟と呼ばれる、
豪傑のドクターが、診療所のトップとして、医療を施しています。
そこに、ひとりの若きドクターが赴任するところから、
物語が始まります。
裕福な家庭で育ち、オランダ医学を学び、
お城勤めの医師として、出世の道を歩むつもりが、
貧乏客ばかりの、町医者に送り込まれてしまいます。
だから、いやいや赴任してきます。
当然、赤ひげ先生にも反発します。
しかし、様々な経験を経て、自らの至らなさを知り、
最後には、
〝自分は生涯、この診療所に捧げます!
赤ひげ先生の後を継ぎます!〟
という決意にたどりつきます。
親子ではなく、師匠と弟子による、事業の継承が描かれます。
映画は、若きドクターが、
養生所の門の前に立つところで始まり、
締めくくりも、同じ門の前に立つところで終わります。
最初は、とてもいやそうな表情で門を眺めます。
が、最後は、決意と希望にあふれた表情で、門を眺めます。
同じはずの門が、まるで輝いて見えます。
見る者の気持ちが違えば、
同じものでも、見えかたが違ってくるのです。
赤ひげ先生を三船敏郎さん、
若きドクターを加山雄三さんが演じます。
3時間の長尺ですが、
決意を新たにしたい年末年始に、見たくなる作品なのです。
(古山喜章)
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