「親」という黄金株 ③
株式には、1株でも拒否権があるという、
いわゆる「黄金株」というものがあります。
社長を退任したあと、期限付きで保有したりするものです。
後継者が誤った経営判断に陥らないよう、導くためのものです。
しかし、経営の現場を見ていると、
「親」という立場がまさに「黄金株」であるかのような、
無茶な発言・振る舞いを、目の当たりにすることがあるのです。
③〝銀行さんに失礼なことをするな!〟
70歳を越える経営者には、
「とにかく資金繰りに苦労をした」という方が多く、
そのせいか、
いわゆる〝銀行サマサマ病〟の方も多いです。
銀行を〝さん〟付けすること自体、その現れです。
ある後継社長が、銀行交渉を進めていました。
業績も向上し、TIBOR&スプレッドでの金利交渉も覚えました。
さらには、強くなった財務体質を武器に、
無担保、無保証、繰上返済有り、という条件で、
銀行交渉ができるようになったのです。
おかげで、数年前では考えられない、低金利になりました。
すると、今は代表権を返上している父親が、
〝銀行さんに失礼なことをするな!〟
〝銀行さんに、無茶苦茶なことを言っているそうじゃないか!〟
〝そんなことしてたら、銀行さんが助けてくれなくなるぞ!〟
と、言うわけです。
良かれと思って交渉を進めている後継社長にとっては、
ショックです。
父親にすれば、かつての苦労時代がしみついており、
銀行に対しては、その頃の意識が変わらないのです。
そうやってうまく乗り越えてきた、という、自負があるのです。
しかし、経営環境は、変わるものです。
金利は7%や8%が当たり前、
借入れ需要が多く、貸す側が有利、
支店長権限が大きく、つきあいが大事、
今や、そんな時代ではないのです。
「親」にすれば、釘を刺したつもりが、
「息子」にとっては、水を差された、
ということになるのです。
この食い違いが、新たな不協和音にも発展しかねないのです。
いつの時代も、
今の経営環境をベースに、考えてほしいのです。
(古山喜章)
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