「親」という黄金株 ②
株式には、1株でも拒否権があるという、
いわゆる「黄金株」というものがあります。
社長を退任したあと、期限付きで保有したりするものです。
後継者が誤った経営判断に陥らないよう、導くためのものです。
しかし、経営の現場を見ていると、
「親」という立場がまさに「黄金株」であるかのような、
無茶な発言・振る舞いを、目の当たりにすることがあるのです。
②〝なぜ株価が上がるのかわからない!〟
長きにわたって剰余金が積み上がり、株価が高くなる。
これは、好業績を維持できた、という証拠です。
厳しい経営環境の中、立派なことです。
で、先代社長はすでに亡くなり、息子が会社を継ぎます。
しかし、
先代社長の奥様、つまりは後継社長の母、は健在で、
株を結構お持ちである、ということがあります。
ある後継社長が、
「今の株価では、母に万一のことがあると、
相続税の負担額も大きくなってしまう・・・。」
と心配され、
〝じゃあ高額退職金を受け取ってもらい、株価を下げましょう。〟
となりました。
で、後継社長は、今も取締役&株主である、
母親に、〝株価が上がっている〟ことを説明したわけです。
すると、帰ってきた返事が、次のとおりだったのです。
〝なんで私の持ってる株の値段が上がるのよ?〟
〝どこで売り買いしているわけでもないのに・・・。〟
〝なぜ株価が上がるのか、私にはわからない!〟
と、なったわけです。
これは、説明が大変です。
そもそも、説明を聞きたいのではありません。
心のどこかに、
〝ウチの息子の言う通りにして、大丈夫なのだろうか?〟
という、不安をお持ちなのです。
親心からくる、我が子への不安が、いつまでも抜けないのです。
で、結局、その母親の信頼が厚い、
株主でも役員でもない親族の協力を得て、
最終的には、快く了解をしていただくことが、できたのです。
長年のしがらみや感情から、
互いの言うことを、素直に受け入れられない、
ということが、同族経営において、よく見られることです。
しかし、そのままぶつかりあっていては、
こじれる一方になるのです。
相続税は、経営者個人の問題ですが、
経営者に多額の負担が来ることはやはり、
経営にとって、マイナスなのです。
同族間の感情やしがらみにとらわれず、
経営の視点から、素直に問題を見れる、
という状況に、しておいてほしいのです。
(古山喜章)
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