何でも引き受けない
とある特別養護老人ホームでの話です。
利用者を施設に受け入れるとき、
「サービスの一環で」と、
個人の通帳と印鑑を預かっていました。
月々の利用料や医療費、オムツ代などは、
事務職員が手続きして、その個人の通帳から払っていました。
毎月1000円、“手数料”として受け取ります。
しかし、この個人資産の管理というのは、かなりやっかいです。
個人によって違いますが、1人平均50~60万の残高です。
多い人だと、一人で7、8百万円ぐらいもっているのです。
そこでは、50人の利用者から、合計で30百万円預かっていました。
この預り金は、あくまで利用者のものです。
なので、法人の帳簿にはのってこない、
簿外の資産です。
それで、この施設の金庫を整理していたら、
10年以上前に亡くなった方の遺品が出てきたのです。
みると、通帳のほかに、
宝石(ネックレス、指輪)や認印が10個以上、でした。
なんと、戦時国債(戦時中に発行した国債)までありました。
過去の書類をひっぱりだして、家族の方に連絡します。
連絡先で書いてあった3人のうち、
2人はお亡くなりで、ようやく1人に連絡がつきました。
すったもんだの末、なんとか家族のもとに戻しました。
介護施設では、日本全国、毎月1件のペースで、不正が発生しています。
そして、一番多いのが、この預り金なのです。
金額は結構膨らんでいるのに、法人の帳簿にのってこないので、
担当者にまかせっきり、になるのです。
結果、通帳と印鑑を持って、勝手に引き出すのです。
こうなってしまうと、「サービスの一環」ではありません。
最初から、受けない方がよかった、ということになります。
1000円の手数料と、その手間を考えると、
あきらかにサービス過剰で、赤字です。
結局、この施設では通帳と印鑑をお返しすることにしました。
何でもかんでも、お客様都合で安請け合いすると、
結果的に、自分の首をしめることになってしまいます。
(福岡雄吉郎)
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