M&A②
貸借対照表(B/s)が理解できない母と息子
県内に7か所の食品スーパーを展開するタナベスーパー(仮名)
30年間、地域では かっては 愛されるお店であったが、
県外からの元気の良いスーパーやデイスカウントストアー、ドラッグストアに攻められて、
往年の勢いは減り、収益性も落ち込んでいました。
それ以上に 他社の出店攻勢に対して無理して出店したため
銀行借入金が膨れ上がっています。
70歳を迎えようとしている老経営者にとって、
ここ数年の月々の返済金に悩まされ、
仕入先の買掛金は待ってもらい、増加するばかりでありました。
この際、話のあったX社からのM&Aの話にのり
会社を売却しようと考えたのです。
そして、マツオカスーパー(仮名)に話が持ち込まれ、買収の意図ありとの約束を得ました。
勿論、妻と常務である息子(38歳)に相談したのですが、妻は大反対です。
地元の顔を非常に気にしたのでした。
息子は 学校卒業以来、他人の飯を食ったことがなく、
今さら、どこで働けるのか? 不安でいっぱいで反対。
両名とも なぜ、売却をしなければならないのか理解できないのでした。
P/L上の収益には 赤字は出ているわけではないのです.
しかし。金融機関は、もうこれ以上の借入金の増額には応じてくれません。
打つ手は仕入れ先の問屋に在庫資金分として
6か月の手形で回すことにして、結局 妻と息子の意に応じ、
売却の話は破談になったのです。
しかし、3年後、X社へのタナベスーパーへの売却話が再び持ち込まれ、
当然、私たちマツオカスーパー側としてB/Sを拝見させていただいたのですが、
買掛金が7.5億に膨らみ、純資産も1億円減る有様になっていました。
聞けば仕入問屋も与信が増えるばかりで
とうとう手を引くという事になったとのことです。
年々のP/Lの経常利益や税前利益が黒字であったとはいえ、
在庫や固定資産が増加すれば買掛金や借入金(調査)が、
増加するのは当たり前であり、
それの返済金が回らないと たちまち銀行も仕入れ業者も応じてはくれなくなるのです。
M&Aをして会社を売却するとなると
不良在庫・不良固定資産・退職金等種々のものがあぶりだされ
それらの含み損は売値である自己資本(純資産)を食ってしまい
(含み益があれば別ですが) 借金の肩変わりをしてもらうだけで
ほとんどお金が手元には戻ってこないのです。
M&Aは成立しました。
息子は幹部として置いてもらいましたが、
売却代金は30年間の信用といえ、
陳列してある売物商品は不良在庫であり、
経営努力は無価値状態で、そして、マツオカスーパーの3倍の高い金利を払っていました。
年老いた田辺社長は、失意の中での引退でした。
3年前であれば もう少しましであったものが・・・・
(井上和弘)
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