負債の整理
東京の帝都メンテナンスサービス株式会社(仮称)の
創業者の桜井 良平最高顧問は、週に1回 会社に出る程度で、
楽しく隠居生活をおくっておられます。私が訪ねれば世間話をするぐらいです。
その顧問の応接室に、経理担当と桜井さんの三男の専務が入ってきました。
どうも呼びつけたらしい。
「ここに短期借入金が残っているが、何の目的かね?」
「はい! 社屋の外装と電気設備の修繕で3千万円まで必要とわかりましたので、
短期借入3年で行いました」
「方法は?」
「当座借越の枠で借入ました」
「なに!」
[桜井専務 あれは 単名手形ころがしです]
「あっそうでした」
「君たちなにか! 当座借越枠だ!単名ころがしだ
馬鹿者! わかっていないのか!」
急に怒り出したのは そばにいた私もびっくりです。
創業者桜井名誉顧問が怒る理由は、私にはすぐに理解できました。
短期借入という借方は 運転資金用です。
長期借入金というのは、固定資産、設備資金等という創業者の信念があるからです。
当座借越しは、常に現預金残高をギリギリにして、資金繰りを行う。
思わぬ出金があるとき、数日は当座借越枠を利用する。
単名ころがしは絶対にやってはならないという信念を持っているのです。
すぐに銀行の支店長は、本店にお伺いをたてる必要がないので、
単名手形での、貸付をしようとしますが、約定契約書を作って借金しなさい!
というのがこの老人創業者の考え方です
「銀行は晴れた日には傘を貸してくれるが、雨が降れば傘を取り上げる」。
単名で借りて、転がしているとき
マサカの雨になると転がしをストップするからダメなんだという意味です。
「先生! 若い者に変わってしまうと 借り入れ方の基本がわかっていないよね・・」
と嘆きを私にぶつけてこられます。
「短期借入金」は 回収=支払 が バランスしていれば運転資金は要りません。
「長期借入金」は 設備投資資金です。
全額借入に頼る考え方、一行だけではだめで、必ず政府系も入れる事
「リース利用」コンピューターなどの寿命の短いものは特別としても、
リースの金利は銀行の金利と比べて高いので 使うな
「取引銀行」は、メガ1 地方銀行1 政府系1 これが基本です。
条件は、仕入れ業者と同じ、礼儀を尽くして付き合う事、
しかし、条件は常に厳しく、わが社の利益につながること
支店長、次長は2年任期で二度と支店に戻ってこないので、
銀行の駆け引き(嘘)にのってはいけません。甘い言葉に期待する事なかれ!
桜井さんは、大学卒業して最初に入社した会社が、4年で倒産しました。
倒産時、財務処理を行った経営者の言葉には 重いものがあります。
取引銀行も借入金額が小さくなれば、取引のなくなる銀行が生じて当然です。
しかし、「まさか」があると言って 数を整理しないのもどうかと思います。
取引銀行数、長短借入残高、約定条件、
常にトップが能力を付けて、銀行交渉をしないといつまでたっても負債は減じません。
「わが社は地震や津波が来て、
10か月間操業できなくても潰れないように現預金を積み立ててあるのですよ!」
と豪語した社長がいらっしゃいます。
B/S(貸借対照表)を見せてもらうと、確かに現預金があります。
しかし、右側を見てみると同額の銀行借入金が存在していました。
「社長 10か月間 銀行に金利と元金は返済しなくっていいのですか?」
預金通帳はあっても 借入金残高通帳はありませんからね。。。。
(井上和弘)
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