融資至上主義が、銀行員の秩序を狂わせた①
銀行の不祥事を見ていると、
そこには、営業マンの尻をたたき過ぎる、
融資至上主義の弊害が見えてきます。
①商工中金 不正融資事件
企業への融資を獲得するため、
会社の決算書を改ざんしたとして、
商工中金存続の危機に至る、大問題になっています。
事の発端は、
リーマンショックや大震災の危機から会社経営を守るため、
経済産業省主導で設立した、危機対応融資です。
その実務を担ったのが、商工中金です。
各支店には融資のノルマが課され、支店長主導のもと、
「どんどん貸せ!」となっていったのです。
危機対応融資ですから、財務状況が良い会社には貸せません。
かといって、財務状況が悪い会社を新たに探すのも、
融資を獲得する銀行員にとっては、骨の折れる仕事です。
そこで始まったのが、財務諸表の改ざんです。
しかも、良い数字を悪く見せるための、改ざんです。
損益計算書の販売管理費を増やして営業利益を小さくし、
危機対応に見合う営業利益に改ざんします。
で、特別利益を増やしておけば、
税引前利益と当期純利益のつじつま合わせが可能です。
おそらく
「良い数字を悪くして貸すのだから、
返済不能のリスクは少ないだろう。」
と判断したのでしょう。
普段からつきあいのある、そうたいして財務が悪くない会社にも、
財務データを少し改ざんし、
「お貸しできますよ!
危機対応融資枠ですから、金利も低いし、無担保ですよ!」
となったのです。
とびつく社長が多いのは、目に浮かびます。
一度やりだしたら、
「これなら大丈夫だな。」となります。
この時点で、不正の意識は消えてゆきます。また、
「あの人がやっているなら、自分も。」
となり、他の行員にも拡散してゆきます。
暗黙の了解のうちに、不正融資が広がっていったのです。
支店長からガミガミ言われるより、このほうがよい、
となってゆくのです。
結局、「どんどん貸してこい!」の融資至上主義が、
銀行員の秩序を狂わせ、破壊していったのです。
この例を銀行以外の会社で言えば、売上至上主義です。
今問題になっている、銀行の不祥事の根底は、
売上至上主義にあるのです。
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