金融庁の長官が変わると、どうなるのか?②
金融庁の長官がこの7月に、森氏から遠藤氏に変わりました。
前任の森氏は、
「個人保証や担保に頼る融資から脱却せよ!
事業性を評価して融資せよ!」
と声をあげ、改革を推し進めていました。
しかし、銀行の現場はそう簡単に変わりませんでした。
で、その原因は「金融審査マニュアル」にある、とし、
平成30年度末での廃止を決定しました。
新たな遠藤長官体制も、その路線の踏襲を表明しています。
「金融審査マニュアル」は、
不良債権化するかもしれないような融資を、
銀行がしていないかどうか、
チェックするためのチェックリストです。
金融庁は、この「金融審査マニュアル」に基づき、
各銀行の融資審査や各融資の内容を、
重箱の隅をつつくように審査をしました。
その審査員は、銀行から大いに恐れられていました。
銀行が金融庁サマサマ病に陥った、大きな要因のひとつです。
ドラマ「半沢直樹」に登場した金融審査の場面では、
片岡愛之助がネチネチした審査官を演じていました。
しかし、そもそもが不良債権を減らすためのマニュアルです。
銀行は金融審査対策として、担保や個人保証を取りまくったのです。
そうすれば、不良債権のリスクを回避できるからです。
実際には不良債権が激減した現在も、
担保や個人保証に頼り切っているのです。
これではダメだ、と森前長官は判断し、マニュアル廃止に動いたのです。
一方、そうなると気になるのは、格付け(スコアリング)です。
不良債権対策のひとつとして約20年前に導入され、
金融マニュアルにも“適格に運用すべし”の記載があります。
「金融マニュアルがこの年末に廃止になれば、
格付け(スコアリング)の仕組み運用は、なくなるんですか?」
と、金融行政に関わる方に聞いてみました。
その答えは、
「それはないですね。
マニュアルは廃止しても、格付けの仕組みは残りますよ。」
とのことでした。さらに、
「マニュアルはなくなっても、
融資先の財務状況を判断する仕組みは必要です。
決算データで機械が判断するのをやめると、
困るのは銀行員ですから。」
と語ってくれました。
つまり、
格付け(スコアリング)の仕組みは、変わらず続くのです。
金融審査マニュアルの運用は、この12月で終わります。
それにあわせて、かつての金融審査部門はすでに、
金融庁の組織図からなくなりました。
もちろん、金融庁から銀行に対する、
別の形での審査・アドバイスは今後も存在します。
それでも、従来の金融審査がなくなり、
一番ホッとしているのは、銀行マンです。
「金融審査がなくなって、よかったですね!」
と、支店長クラスの銀行マンには、言ってあげてほしいのです。
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