株式の整理は想定外の連続です⑪
松木製作所の株主には、
現在の松木社長のいとこが株式を保有していました。
いとこの持つ株式は、税務上の時価は、50円でした。
松木社長は、その倍の100円で買い取ろうと考え、
いとこから、いったんはOKをもらいました。
ところが、その後、いとこの態度が変わり、
100円では売らない、と言い出したのです。
後日、いとこの自宅まで専務を送り込んだのです。
もちろん、会話はすべて録音してもらいました。
専務:
『今日は、なぜ、100円でお売りいただけないか、
理由を教えていただきたいと思って、参りました。
父(社長)とでは、色々あって、本音をお話いただけないかと思い、
息子である私(専務)がお話を伺いたいと思っております。
当社の株をお持ちになられてから、毎年ずっと配当をしてきました。
通常、上場していない株は、配当することはありませんので、
そのあたりも考慮していただきたいと思っています。』
いとこ:
『お父さん(社長)から、話を聞いたあと、いろんな人間に相談したんや。
弁護士さんとか、税理士さんとかな。当然、娘にも話をしたわ。
そしたら、みんなから、
“そりゃ安すぎる。もっと高いはずや!”と言われましてな。
だから、お父さんには、100円では売れん!と言うたんや。
配当っていったって、そりゃ、大株主のあんたらにも
配当されてるんやないんか?
私だけに特別に配当してくれてるんやないんやろ?』
専務:
『えぇ、それはまぁ、そうなのですが…
ただ、お持ちの株式の時価は50円ですし、
100円というと、当初の出資額の倍の金額なので、
ご検討いただけませんか?』
いとこ:
『これは、あんたも知っての通り、
私の父(社長のおじさん)から相続で受け継いだものや。
父はな、生前よくこう言うとった。
“この株は、親戚のよしみで出資したんやない。
これは、この会社の将来を見込んで、投資したんや!!“ってな。
だから、これは投資なんや。
ということは、あんた分かるか?
少なくとも、上場会社の株価と同じように計算してもらわんと困るんや。
つまりや、出資した当時の日経平均株価と、
いまの日経平均株価を比較して、
その上がり幅と同じくらいの株価でないと、
投資家としては納得できんのや!
まぁ、7倍~8倍くらいにはなっとるやろな~』
こう言われたのです。
自分はお金を一銭も出してないのに投資家目線なのです。
むちゃくちゃな理論なのです。
とはいえ、このいとこの株を買わないと、次に進めません。
とりあえず、専務は意見を聞くだけ聞いて、
その場を後にし、後日作戦会議を開いたのです。
(次回につづく)
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