無知の恐怖②
先日、相談に来られた東北建材(仮称)での話です。
現在の大谷社長は、3代目です。
「実は、いまから半年ほど前にちょっとした事件がありまして、
もともと創業一族、といっても、最近は当社の経営にタッチしていなかった人間がいたのですが、
その方が20%の株式を持っていたんです。
実は、その株主が、とある会社に株式を売却してしまったのです。
そして、新たに株主となった会社から、
“株式を買い取ってくれ”と持ち掛けられたのですよ。」
「その額が8億円だったのですか?」
「はい、色々とありましたが、
簡単に言うと、そうなりますね。
当社の自己資本(純資産)が、約40億円ですので、
その20%ということで、8億円だったのです。」
「社長、ちょっと待ってください。
御社には、取締役会の譲渡承認(※)という制度はなかったのですか?」
※取締役会の譲渡承認というのは、
株主Aさんが、別の方に株式を譲渡する際には、
取締役会の承認が必要という制度です。
ほとんどの会社が、定款上で、
そのような規定を定めています。
「はい、当社でもそのような規定はありましたし、
私も、以前からそのような規定があることは知っていました。」
「だったら、なぜ、その制度を使わなかったのですか?
仮に、今回のようなケースで、
株式の譲渡を認めなかった場合は、どうなるかご存知ですか?」
「いえ、知りません。」
「この場合は、会社が別の買受人を指定するか、
もしくは、会社が自ら株式を買い取ることになります。
その買取価格は、交渉となりますが、
ここを上手に行えば、8億というお金を払わずに済んだでしょうね。」
「そうなんですね・・・
あぁ、失敗したなぁ・・・
地元の弁護士は、そのように言っていなかったのです。」
「地元の弁護士は、なんて言っていたのですか?」
「はい、次のように言われました。
“新しい株主が、更に別の株主に転売するかもしれないので、
もう買い取ったほうがトクですよ“
このように言われたのです。」
そのように言われて、この社長は、
高いお金を払って、株式を買い取ったのです。
別の株主に転売など、できません。
取締役会の承認が必要ですから。
事実は小説より奇なり、です。
(福岡雄吉郎)
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