波紋を呼ぶ相続税対策⑥
個人の相続対策で、納税者が敗訴した案件です。
税務署の伝家の宝刀 総則6項が
抜かれた結果、どうなったか?
納税者は、
『あくまで相続税は、通達に従って計算した結果であり、
何もおかしいことはない。』
税務署は、
『確かに通達に従っているとはいえ、
相続税逃れにやったことは、明らかだ。』
両者どちらも折れずに、
結局、裁判をすることになったのです。
そして裁判ではどうなったか?
東京地方裁判所は、次のように考えました。
『通達の評価方法を形式的に適用すると,
各不動産の購入と借入れに相当する行為を行わなかった他の納税者との間で,
かえって租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかというべきであり,
評価通達以外の評価方法で評価することが許されるというべき。
そして,鑑定評価の適正さに疑いをさしはさむ点がないことに照らせば,
各不動産の時価は,収益還元法に基づく本件鑑定評価額が妥当である。」
と考えたのです。
要するに、税務署が主張した、
“鑑定評価額”を使って相続税を計算しなさい、
と判断したのです。
今回のような大型の税務対策を打つ場合は、
ストーリーが非常に重要になってきます。
例えば、
・いまの住まいが騒音、振動が気になってしまった。
隣の住人と関係が悪くなってしまった
・だから、新しい住まいを買った。
・買って住んでみたはよいものの、
やはり問題が出てきたため、もう1軒を買った
こういった理由で不動産を取得したということを
エビデンスとして残したうえで、
・相続が発生してから、すぐに売らない。
・銀行と話をする際も、「節税で」とは一切口にしない
であれば、結果が違ったでしょう。
「取引、行為に、そもそも節税目的はなかった、
ただ、結果的に節税になったにすぎない」
ということをエビデンス上で、上手に残すことがやはり重要なのです。
(福岡雄吉郎)
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