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2019年12月 4日 (水)

波紋を呼ぶ相続税対策⑤

個人の相続対策で、納税者が敗訴した案件です。

 

日経新聞の記事に書かれていなかった情報も含めて、

前回の続きです。

 

これまでのなかで、ひっかかるのは、

 

・90歳を超えて10億円の借金をしたこと

 

・相続税を計算するときに、1億円と評価した不動産を、

 まもなく5億円で売却していること

 

ということでした。

 

「ちょっとおかしくない?」とつけいるスキはあったわけです。

 

おまけに、新聞記事にはありませんでしたが、

 

借入金に係る銀行の貸出稟議書もポイントの一つでした。

 

この不動産の購入や借入れは、

遺族(被相続人)や会社の事業承継の過程の一つと位置づけられてはいましたが、

近い将来発生することが予想される相続において

相続税の負担を減じるものと知り,かつ,

それを期待してあえて企画して実行したと認められた、

というのです。

 

要するに、「節税のために」というエビデンスが残ってしまっていた、

ということです。

 

となると、税務署としては、

「確かに通達に従って評価しているとはいえ、

普通はそうしない、ということが行われている。

節税のために行ったということが明らかであり、

それは“けしからん”」と考えたのです。

 

税務署が、「これは“けしからん”」

と考えた場合には、総則6項を使って否認してきます。

 

総則6項というのは、伝家の宝刀と言われるもので、

「この通達の定めによって評価することが

著しく不適当と認められる財産の価額は、

国税庁長官の指示を受けて評価する。」

というものです。

 

今回は、この伝家の宝刀が抜かれてしまい、

納税者の相続税申告はおかしい!

となったのです。

 

(福岡雄吉郎)

 

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