マサカの坂に備える経営対策 5話連続シリーズ
「借入金が返せなくなったら、どうなるのか?」⑤
結局、政府系銀行からの借入金11億円は、
支払い能力がないことから返済義務を免れることとなり、
三船社長のもとには、約2千万円の借金のみが残ったのです。
その残金は、今も粛々と返済を進めておられるのです。
「政府系銀行は、
今になってそのありがたさが、しみじみよくわかります。」
とは、三船社長の言葉です。
私も改めて、複数の銀行から資金調達するなら、
政府系を入れるべき、と実感させていただきました。
そもそも、政府系銀行には、他の市中銀行にはない、
ありがたい特徴があるので、再確認いたします。
1.預金をする必要がない
2.“待ってください!”と懇願すれば待ってくれる
3.余計なセールスをしてこない
4.不良債権となってもサービサーへの売却はない
順を追って確認してゆきます。
1.預金をする必要がない
政府系銀行は、国の予算から資金を得てそのお金を貸す、
という流れの融資が基本です。
集めた預金を貸す、という市中銀行とは、ここがまず違うのです。
市中銀行の場合、その銀行支店に口座を持ちます。
融資を受けていれば、預金も必ず発生します。
しかも、銀行の言うがままだといまだに、
融資を受けてその一部を定期預金に積む、
という、歩積み両建ても中小企業では発生しているのです。
歩積み両建ては、金融庁が禁止していることのひとつなのです。
2.“待ってください!”と懇願すれば待ってくれる
破綻まで行かずとも、資金繰りが行き詰まったとき、
“頼みます!”“拝みます!”で返済猶予してもらえます。
特に、災害などの危機発生時は国からも、
要望があれば猶予しなさい、との指示が下ります。
苦しい時に、待ってもらいやすいのは、大いに助かることなのです。
3.余計なセールスをしてこない
“いい株ありますけど、いかがでしょうか?”
“新しい金融商品が出たので、ぜひご説明にあがります!”
など、市中銀行は何かとセールスにやってきます。
政府系銀行は、必要のない商品を売り込んできません。
余計な時間をとられることがないのです。
4.不良債権となってもサービサーへの売却はない
今回紹介した、三船物産がいい例です。
サービサーへの売却はなく、
政府系銀行の内部処理で済ませてもらい、
借金を返済する必要がなくなったのです。
やむを得ず事業が立ち行かなくなったとき、
このことは他の市中銀行にはない、大きなメリットなのです。
これらのことから、
複数の銀行から融資を受けて事業を展開するのなら、
そのうちの1行は、政府系銀行を活用してほしいのです。
最悪の事態に陥ったとき、少しでも負担を軽くできるのです。
今回紹介した三船社長も、
「政府系のおかげで先が見えるので、
気分的には借金を全部かかえていたときよりずっとラクです。」
とのことだったのです。
破綻のような状態に陥ることなきよう、
経営に取り組むのが先決ですが、
最悪の時のことを考えておくことも、経営者には必要なのです。
(古山喜章)
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