マサカの坂に備える経営対策 5話連続シリーズ
「借入金が返せなくなったら、どうなるのか?」②
事業をやめて5年で、20億円の借入金が2千万円になった、
という三船社長(仮名)にお会いし、
いろいろ、ここに至る経緯のお話しを伺いました。
「事業をやめられた時の借入金額はどのくらいだったんですか?」
「21億円に近いくらいでしたね…。」
銀行別の内訳をお聴きすると、
メガバンクと地方銀行の市中銀行が約10億円。
残りの約11億円は政府系銀行です。
「メガバンクと地方銀行といっても、
中心は地方銀行ですよね。」
「そうです。
メガバンクはそこまで行くまでに、
『もうこれ以上は貸せません』となって、
残高がいくらも残っていない状況だったので。
その動きはやっぱり、早かったですね。」
「確か、緑のメガバンクでしたよね?」
「そうです。よく覚えてますね。」
借入金が過剰になってゆき、
返済能力に黄色信号、赤信号がちらつき始めると、
メガバンクはまず、折り返しの転がし融資を拒み始めます。
逆に言えば、
メガバンクがそのようなことを言い出すのなら、
格付(スコアリング)で言えば、10ランクのうち、
下から2番目「実質破綻先」レベルと評価されている、
ということです。
地方銀行はその時点ではまだ、
1ランクのゲタを履かせて、
下から3番目「破綻懸念先」レベルの評価とし、
融資を継続しているような様子なのです。
結局、地方銀行のほうが融資先に困り、
金利も思うように稼げません。
それならば、
“貸せるなら、泣くまで貸そうホトトギス”
といった心境に、地銀マンは陥るのです。
それに、資金繰りに困っている会社は、
資金需要もあれば、金利の交渉など仕掛けてきません。
銀行の思惑どおりの金利条件で通るのです。
なぜなら、資金繰りに行き詰まっている社長は、
「貸してもらえるだけでありがたい!」
という状況に陥っており、交渉する気など、さらさらないのです。
利ザヤ稼ぎに苦しむ地方銀行には、ありがたい話しです。
泥船とわかっていても、ギリギリまで乗り続けたいのです。
「最後の時点で、メガバンクと地方銀行で、
全部で何行あったんですか?」
「8行です。
あとは政府系1行で、全部で9行ですね。」
「地方銀行も、他府県の銀行が多かったですよね。」
「10億円の半分強が、他府県の地方銀行です。
よほど他に貸すところがなかったのか、
最後までよく粘って貸してくれました。」
「で、最後はどうなったんですか?」
「メガバンクと地方銀行の残債は、サービサーに売られました。」
銀行間で協議を諮り、全行一致で、
不良債権処理を行うこととなり、
有無を言わさず、サービサーへと流れていったのです。
(続く…)
(古山喜章)
« マサカの坂に備える経営対策 5話連続シリーズ | トップページ | マサカの坂に備える経営対策 5話連続シリーズ »
「銀行交渉」カテゴリの記事
- 銀行融資の担保・個人保証はすぐに外しなさい④(2023.07.14)
- 銀行融資の担保・個人保証はすぐに外しなさい➂(2023.07.13)
- 銀行融資の担保・個人保証はすぐに外しなさい②(2023.07.11)
- 銀行融資の担保・個人保証はすぐに外しなさい①(2023.07.10)
- 特別損失を活用しなさい(2023.05.02)
« マサカの坂に備える経営対策 5話連続シリーズ | トップページ | マサカの坂に備える経営対策 5話連続シリーズ »
コメント