5話連続シリーズ「メインバンクを切り替えろ!」①
関東エリアで建築資材卸売業を営む、牧野建材(仮名)でのことです。
卸売業は、在庫を抱える商売で、売ったあとの回収も長い、
という事業特性があります。
そのため、それなりの資金需要が常についてまわります。
ただし、牧野建材は単なる卸売業ではありませんでした。
建築資材の加工もしたうえで、納品していました。
付加価値がある分、ライバルよりも粗利益が高かったのです。
それは、私たちのセミナーで学んだ、
後継者である牧野社長と、弟の牧野専務の功績だったのです。
牧野建材は、絶えず数十億円の資金需要があるうえに、
同業他社よりも営業利益が多いのです。
近隣の銀行にすれば、
なんとしてでも融資をしたい、おいしい地元企業のひとつだったのです。
ある日、銀行交渉についての私たちのセミナーのあと、
弟の牧野専務から相談がありました。
「うちの借入先は地方銀行3行と政府系1行です。
メインバンクは地元で一番強い関東中央銀行(仮名)です。
ところが金利や条件を調べてみたら、
この銀行が一番悪い条件なんですよ!」
「いままで条件知らなかったんですか?」
「恥ずかしい話し、
これまで、先代の社長とその時代の経理担当で銀行交渉を
仕切っていたので、我々後継者は、わからなかったんです。」
借入金の総額は、約60億円です。
内訳をみると、関東中央銀行からの融資額が約35億円、
政府系銀行が約10億円、
あと15億円を、他の地方銀行から調達している、
といった状況でした。
牧野専務いわく、
「関東中央銀行は金利が一番高い上に、借入額が一番多いんですよ。」
「どうしてそんなことになっているんですか?」
「結局、先代社長や古参の経理担当には、
かつて関東中央銀行に助けてもらった、という恩義があるらしいのと、
ここが貸してくれるから今のわが社がある、
と思いこんでいたんですよ。」
「典型的な、銀行サマサマ病ですね。」
「そうなんですよ…。」
「で、どうしたんですか?」
「まずは代がわりしたので、改めて関東中央銀行に交渉しました。」
「何を交渉したんですか?」
「金利をタイボ+スプレッドに変えて下げることと、
担保・個人保証を外すことです。」
そのときの条件は、
固定金利1.85%、担保・個人保証あり、だったのです。
牧野建材の自己資本比率は約15%でした。
その当時の金利相場でいえば、1%を切るのは当たり前、
0.7%が平均くらいだったのです。
平均よりも1%以上、高い金利だったのです。
融資額が35億円なので、4千万円近く、
無駄な高金利を払っていたのです。
「で、交渉してどうだったんですか?」牧野専務に尋ねました。
「“そんなこというなら、うちにも考えがあります。”
て担当者から言われて、ムカッときたので、
“おどしですか”と言い返しました。」
理不尽ないことを言われると熱くなる、
牧野専務の性格に火がついた瞬間でした。
「関東中央銀行を、
メインバンクから外しても構わないでしょうか?」
「ぜんぜん構わない。いまどきメインバンクといっても、
融資額のシェアが大きいだけで、なんの役にも立たないでしょ。
実際、条件は最悪なんだから。」
「そうですよね。安心しました。
メインバンクを切りはずす方向で、動いてゆきます。」
牧野専務は社長にも了解をとったうえで、
メインバンクである関東中央銀行からの融資を切り外すべく、
動き出しました。
牧野専務には、密かに描いている、秘策があったのです。
(続く…)
(古山喜章)
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