4話連続シリーズ「8億円の保険金にかかる税金をなんとかしてください!」④
④誰もがプロと思ったら大間違い
保険金による8億円利益対策として進めていた、
“年金受け取り払い”の特約締結に対して、
「うちの保険商品ではそんなことできません。聞いたことがない!」
と言っていた保険屋も、ついにその存在を認め、
すべての保険契約に対して、特約締結を進めることとなりました。
「どんな感じで分割して受け取れるんですか?」
私も実際に経験したことのない例だったので、
手続きを進めている長谷川会長に尋ねてみました。
「保険会社によって分割年数が異なりますが、
聞いていたとおり、最大で30年間にわたって分割で、
毎年受け取れるようになっていますね。」
「30年は、今回の場合でも、長すぎますね。」
「そうなんですよ。」
「結局、何年で分割されるんですか?」
「どの保険金も10年分割にしました。」
「ということは、毎年8千万円ずつですね。」
「そうです。その程度の利益額なら、
あらかじめわかっていれば、対策は打てると思いますので。」
実務的なことに関しても聞いてみました。
「書類への記載とか捺印とか、簡単なんですか?」
「いやもうほんとに簡単です。
何年で分割するか、選択肢があるので、
10年分割なら10年のところを丸で囲んで1ケ所だけ捺印する、
というパターンの書式がほとんどでした。」
「あとは担当者に渡すか郵送ですか?」
「そうです。うちの場合は全部、担当者に手渡す形です。」
「もう全部そろったんでしょうか?」
「それが、遅れて進めたうちの1社がまだなんです。」
そんな特約はない!と言っていた保険会社だけ、
手続きが若干遅れていたのです。
その数日後に、“年金受け取り払い”の手続きは完了しました。
とりあえずこれで一安心、と思っていた3週間後に、
長谷川会長から連絡が入りました。
「社長が亡くなりました。」
「えっ!山下社長、亡くなられたんですか!
余命半年までって、まだあれから2ケ月半くらいですよ!」
「病状が急変したらしいです。」
いったん難しい病魔に蝕まれると、
その先は、ほんとにいつどうなるか、わからないものなのです。
お悔やみをお伝えしていると、
長谷川会長が悲しみをこらえながらも、おっしゃりました。
「ありがとうございます。
山下社長のことは悲しくつらいことなのですが、
保険金の対応を完了させることができていて、
それはそれでよかったと思っています。
ありがとうございました。」
つらいお気持ちのなか、感謝のことばを述べられる会長の様子に、
こちらも涙がこみ上げてきました。
もし、亡くなるまで半年あるからそれまでに終えておけばいい、
という気持ちで取り組んでいたら、
“年金受け取り払い”の締結は、間に合わなかったのです。
すぐに動き、保険会社の担当者を急かして進めたのが、
功を奏した形となりました。
併せて、保険会社の担当者といえば、
保険のプロだから保険のことならなんでも知っている、
と思ったら大間違いなのです。
保険に関わる税務知識や、詳しい商品知識をお持ちの方は、
保険販売関係者でも、ごくわずかしか、おられないのです。
役員の生命保険を活用している中小企業は多いです。
その多くは、ピーク時に解約する、ということを想定しています。
しかし、生命保険は本来、死亡時の保険金を受けとる、
という商品です。
誰しも、病気に関わらず、命を突然失うこともあるのです。
そうなると、多額の保険金が一気に利益計上されます。
残された者は、予想外の税金対応に追われます。
その予防策として、
“年金受け取り払い”という特約をぜひ、
知っていただき、活用してほしいのです。
今回の事例の西日本商品企画(仮名)では、今も毎年、
亡き山下社長からの贈り物のように、
8千万円の保険金が利益計上されているのです。
(古山喜章)
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