5話連続シリーズ「種類株式活用の難関を超えよ!」③
③銀行の株主に同意を得よ(前編)
近畿地区で事業を続ける中小企業、株式会社関西特殊整備(仮名)
において、事業承継対策のひとつとして、
種類株式を活用することにしました。
しかしそのためには、全株主の同意が必要なのです。
株主のひとつである、阿図仮市には、
普通株式から種類株式への転換の同意を得ることができました。
次に同意の承認を得る必要があるのは、
地元に支店を構える、関西ネクスト銀行(仮名)でした。
関西特殊整備とは先代の頃から口座取引のある銀行です。
関西ネクスト銀行が保有している株数は、全体の4.9%です。
先代時代に、
いわゆる持ち合いの形で、互いに株式を譲渡したのです。
山中社長に聞きました。
「銀行はどうして4.9%の保有になっているのか、わかりますか?」
「その%に、何か理由があるんですか。」
「そうなんです。
銀行は民間会社の株式を、議決権で5%以上持ってはいけないと、
銀行法で定められているんです。
だから4.9%なんです。」
「そうなんですか。知りませんでした。
えっ、それじゃあ、阿図仮市の24%が種類株式になって、
無議決権になったら、銀行が普通株式のままだと、
5%以上の議決権比率になりますね。」
「そうです。そこです。
このままだと、コンプライアンス上の問題となりかねない、
というところを、銀行に対してちょっとプッシュするんです。」
「なるほど。その線でいきましょう。」
さっそく、関西ネクスト銀行へ社長から電話し、
概略の趣旨説明をした上で、別途、説明文書も、
担当者あてにメール送信しました。
相手が銀行なので、事業承継対策のひとつ、
という匂いは出したくありません。
あくまでも、意思決定をスピーディーにすること、
種類株式の活用を通じて従業員株主の経営参画意識を高めること、
を主眼とすることだけを伝えたのです。
すると、支店の担当者と支店長、それに本部の法務部から担当者2名、
併せて4名で来社されることになりました。
同意書への捺印は、法人であれば代表印を押してもらうことになります。
あまり例のないことなので、法務部が動くのも、もっとなのです。
また、山中社長の心配が始まりました。
「同意してもらえますでしょうか。
それとも、同意できないから評価額で買ってくれ、
とか言われないでしょうか。」
関西特殊整備の株価額は高騰していました。
4.9%の保有でも、軽く1億円を超える状況だったのです。
評価額で株式を買い取るだけの手元資金は十分にあるものの、
できれば資金流出を避けたかったのです。
種類株式導入に対する説明のための資料や図表を用意し、
銀行の来社に備えました。
そしていよいよ、4名が来社する日になったのです。
(続く…)
(古山喜章)
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