5話連続シリーズ「種類株式活用の難関を超えよ!」④
④銀行の株主に同意を得よ(後編)
近畿地区で事業を続ける中小企業、株式会社関西特殊整備(仮名)
において、事業承継対策のひとつとして、
種類株式を活用することにしました。
しかしそのためには、全株主の同意が必要なのです。
株主のひとつである、阿図仮市の同意を得て、
次に同意の承認を得る必要があるのは、
地元に支店を構える、関西ネクスト銀行(仮名)でした。
いよいよ、支店長、担当者、本部の法務担当4名が来社しました。
こちらは、山中社長と財務担当、そして私の3名ですが、
少し遅れて先代会長が参加する流れでした。
関西ネクスト銀行は、関西特殊整備(仮名)と先代時代からの取引先です。
但しここ数年、借入金はない状態です。
関西特殊整備の自己資本比率は60%以上です。
銀行にしてみれば、ぜひとも融資をしたい取引先だったのです。
挨拶もほどほどに、法務担当のひとりが切り出しました。
「いやぁ、当行でもあまり例のない依頼でしたので、
どのような趣旨でおられるのか、ご確認だけさせていただき、
捺印を進めたいと考えている次第です。」
山中社長が心配していたような、
「時価評価で買い取ってください」という雰囲気ではない感じでした。
支店長含め、今後もおつきあいをしたいので、
大きな問題がないのなら、
そのまま関西特殊整備の株式を保有しておきたい、
といった対応だったのです。
山中社長から改めて、種類株式活用の内容と趣旨説明をしました。
但し、事業承継対策のため、ということは禁句にしていました。
新たな資本構成で意思決定のスピードアップを図りたい、
ということが一番の目的であることを伝えました。
そして私からは、
銀行は民間企業の議決権株式を5%以上保有できない、
いわゆる5%ルールに関することをお伝えしました。
「種類株式に転換すれば、銀行法で定められている、
5%ルールにも触れることなく、
そのまま保有していただけますよね。」
「そうですね。問題ありませんね。」
法務担当の方が言いました。
「コンプライアンスへの対応が、何かと大変ですよね。」
「そうなんですよ!」
というやりとりを終えたころに、先代である会長が入室してきました。
銀行の4名の態度が引き締まり、改めて挨拶が交わされました。
「今回ちょっとお願いしますけど、よろしくね。」
会長は、厳しいことでもさらっと早口で軽くまくしたてるタイプです。
「何か問題あります?どうですか?なにも問題ないでしょ。」
と矢継ぎ早に投げかけます。
法務担当が答えました。
「はい、特に問題ございません。
十分に理解させていただきましたので、
同意書をいただければ、こちらからも説明して、進めさせていただきます。」
さらに会長が言いました。
「今度、大きな金額の退職金を考えているから、
そのときはまた、協力してくださいね。よろしくね。」
その言葉に今度は支店長がすぐさま反応しました。
「もちろんです!
こちらこそよろしくお願いします!」
会長の退職金支給の案件が控えていたので、
そのことを伝えた途端、支店長が急に元気になったのです。
こうして、最も気にかかっていた、銀行からの同意も、
無事にいただけることとなりました。
あとは、元社員の親族が保有する株主からの同意をどうするか、
ということだけが残っていたのです。
(続く…)
(古山喜章)
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