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2021年3月 5日 (金)

手形廃止を活用せよ④

2021年2月18日の日本経済新聞で、

「紙の手形2026年廃止」の記事が掲載されました。

手形に関しては昨年9月にも、

「手形決済期限120日から60日に短縮(2024年まで)」

の記事が発表されました。

支払手形という日本固有の古き商習慣は、消えつつあるのです。

 

④「でんさい」も手形であることに変わらない

 

「徐々にでんさいに切り替えてます!」

という声を聴くことがあります。

「でんさい」は、2013年に始まった電子債権で、要は、

「紙の手形からデジタル管理の手形に変えました。」ということです。

 

「でんさい」に切り替えた理由として多いのは、

印紙税や郵送料がかからない、

現物がないので盗難や紛失がない、

事務作業が減る、

等ということです。

 

それはそれでよいのですが、結局、手形であることに変わりません。

決済期限にその「でんさい」が決済されない場合、

“支払不能”という“不渡り”同様の扱いを受け、

各銀行へ通知されます。

6ケ月以内に再度発生すれば、銀行取引停止です。

紙の手形の「不渡り」と同様に、倒産リスクは存在するのです。、

発行時や決済時等の銀行手数料もかかります。

 

なので、「でんさい」に切り替えたとはいえ、

手形そのものが持つリスクを抱えているのは、同じなのです。

加えて、「でんさい」の取引額も、2019年以降、伸び悩んでいます。

ほぼ横ばいなのです。

 

一方、昨今の流れとしては、DX(デジタル化)を推進すべく、

銀行も「でんさい」を増やして手数料を増やしたい、のです。

 

「でんさい」を仕切るのは、全国銀行協会が出資して

立ち上げた会社です。要は銀行の仕切りなのです。

株式会社全銀電子債権ネットワーク、という会社です。

いわば銀行員の天下り先です。

「でんさい」が増えなければ、管理コストがかかるばかりで、

手数料収入が増えず、銀行サイドは困るのです。

だから「でんさいに切り替えましょう!」と声をあげるのです。

 

また、今回コロナ禍において、建設業や製造業、卸売業など、

手形を扱う会社が多い業界は、ダメージが少なかったのです。

もし、これらの業界にも飲食業や宿泊業のようなダメージが

及んでいたら、不渡りが多発し、倒産はもっと多かったと思われます。

不渡りとみなさない、という特例措置はあったものの、

その限度を超える件数が、多く発生していたはずなのです。

 

倒産が増えれば失業者が増えます。政府はそれを一番恐れます。

だから政府は、

“紙の手形を廃止する”とはいっても、

“でんさいを増やす”とは言いません。

おそらく手形そのものを廃止させたい意向なのです。

そうでなければ、

最近発表されたような、「銀行手数料を引き下げさせる!」

ということはしないはずなのです。

「でんさい」も手形全面廃止の経過措置的には残るのものの、

やがて廃れてゆく仕組みと思われるのです。

 

中小企業の経営においては、

手形を受け取らないし、発行もしない、

それでいて、

回収は早く、支払いは遅く、であってほしいのです。

なので「でんさい」に変えたからそれでいい、

ということではなく、現金取引の形に切り替えて、

倒産リスクなく、銀行手数料もかからない、

という状態に進めてほしいのです。

 

(古山喜章)

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