手形廃止を活用せよ②
2021年2月18日の日本経済新聞で、
「紙の手形2026年廃止」の記事が掲載されました。
手形に関しては昨年9月にも、
「手形決済期限120日から60日に短縮(2024年まで)」
の記事が発表されました。
支払手形という日本固有の古き商習慣は、消えつつあるのです。
②支払手形の経営リスクを理解していますか
「支払手形は倒産になる経営リスクがあるからやめなさい!」
と申し上げております。すると、
「受取手形がなくならないと、簡単にはやめれません。」
とおっしゃる経営者が多いのです。
手形は決済期限を決めて発行会社が振り出します。
支払いにあてる手形なので、払う側では支払手形です。
その決済期限と定めた月日に、
決済される銀行口座にその残高がなければ、
いわゆる「不渡り」になります。
手形が不渡りとなった場合、
「この手形 本日呈示されましたが、預金残高不足のため支払い致しかねます。
○年○月○日 株式会社○○銀行 ○○支店」
と書かれた不渡付箋が貼られます。
「不渡り」情報は、地域の手形交換所へはもちろん通知され、
全国銀行協会を通じて全金融機関へ連絡・共有されます。
その6ケ月以内に、この「不渡り」が2度発生すると、
銀行取引を2年間停止する、という処分を、
手形発行会社は課されるのです。
2年間、銀行取引ができないとなれば、
お金を預けることもできなければ、引き出すこともできません。
当然、融資などできません。
結果、資金繰りが回らなくなるのは目に見ています。
これが、「不渡り」を2回発生させれば事実上の倒産、
と言われる所以です。
2度目がなくても、1度発生すれば、
各金融機関からの信頼は一気に落ちます。
さらに金融機関から、「不渡り会社」の取引先へと連絡が行きます。
連鎖倒産になっては、金融機関も損失が膨らむからです。
私も過去の勤務先で、
銀行から外注取引先での不渡り発生の知らせを受けて、
直ちに債権回収のため、経営者宅へ上司と伺い、
生産設備等の資産といくばくかの現預金を差し押さえた、
ということがありました。
思い出すのは、その経営者が病床にあったことです。
資金繰りに窮して、精神的、体力的ダメージを受けていたのです。
お元気な頃と比べて、かなりやつれた様子でした。
こんなことは、回収する側にとっても、いやな思い出でしかありません。
その会社は結局、1度の不渡りで倒産に至りました。
取引先がすべて、一気に危険回避の施策に動き出したからです。
なので、2回で倒産と言われますが、
実際のところ、1回でも倒産になるのです。
手形は期限が来れば、待ったなしで「不渡り」処分です。
手形でなければ、「お願いですから待ってください!」
の、たのむ・おがむという手段があります。手形にはないのです。
「緊急時には、不渡りを猶予されることもありますよね。」
と言われます。
確かに、コロナ禍、東日本大震災、阪神大震災では特例が出ました。
期限通りに決済されなくても、「不渡り扱い」にしない、
ということが一時的に起こりました。
しかし、そんなことはまれなことです。
経営には、どのようなマサカの坂があるかわからないのです。
だから、
支払手形はやめなさい、と申し上げるのです。
(古山喜章)
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