上手に会社を清算する法⑤
これまでの話
財務体質ピカピカの薩摩金属でしたが、西郷社長の一番のテーマは、「役員退職金」にありました。つまり、金額として、いくらまでなら出せるのか?ということです。
改めて、薩摩金属の状況をまとめておきます。
【会社の状況】
・手持ち現金は2億円、それに土地売却で3億円がプラスされる
・自己資本比率は98%
・4年までの売上金額平均は、3.5億くらいです
・それ以降は、家賃収入が年間15百万円
・5年前までは黒字決算、それ以降は、仕事を止めたため赤字決算
【西郷社長、大隈専務】
・西郷社長、大隈専務ともに、4年前まで月額180万円、それから今まで月額30万円
・役員年数は、40年
・役員退職金規程は、「最適月額報酬×在任年数×功績倍率」+功労加算金
※最適月額報酬というのは、過去の一番高い時期の月収を指します
※功労加算金は、30%の上乗せです。
西郷社長、大隈専務の退職金は、これをこのまま計算すると、2億円くらいになります。
会社の財務体力からすると、全く問題はありません。しかし、会社規模(特に最近では、年間売上15百万円の売上しかない会社)からすると、かなり高額な金額になることは、間違いありません。
「役員報酬を下げて既に4年、これから3年経てば、7年になりますね。私たちは、確かに最適報酬月額という考え方をもっています。ただ、退職金額が高額になる場合に、7年前の報酬を使うとなると、これはちょっと考えないといけません。」
「そういえば、私たちに相談に来られる前に、税理士事務所を何社も当たった、と伺いましたが、なんて言われたのでしょうか?」
「えぇ、新聞でも宣伝しているような有名税理士法人に行きました。そこでは、現在が40万円の役員報酬ならば、40万円を使わないとダメだ、と言われました。でも、180万円の時期もあったのですよ?と言いましたが、それでも、ムリ!の一点張りでした。それ以外にも、大手の税理士法人には軒並み相談に行きましたが、他も似たようなものでした。やっぱり40万円を使わないとダメなのでしょうか?」
確かに、役員退職金の一般的な計算式は、最終報酬月額がベースになっています。この場合は、40万円ですね。しかし、この会社はもともと本業で、堅実に稼いでいました。本業をストップしたといっても、すぐにキレイに辞められるわけではなく、債権債務の整理、在庫の処分など、諸々整理しようと思うと、時間がかかるのです。
特に、この会社が取り扱っていたものは、価格が相場に大きく左右される生産財です。在庫の処分時期を見定めていたこともあって、時間がかかった面もあるのです。そして最後に不動産が残っています。
実質的な退職は4年前に済んでいる、と考えれば、30万円しか使えない、という選択にはなりません。ということで、180万円をベースに加重平均計算をおこなって、最終的に、退職金の計算に使う月額報酬を150万円に設定して、退職金を計算することにしたのです。
(福岡雄吉郎)
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