上手に会社を清算する法⑥
西郷社長は、150万円を使って退職金を計算できることに、非常に安堵していました。
「これまで一所懸命会社経営をやってきて、たまたま最後に役員報酬を下げてがために、退職金額が大幅に削られるのは、どうも納得できない。普通に考えておかしいだろう!」と思っていたからです。
しかし、一方で、西郷社長の言動からは、心配性の一面が垣間見えます。
「そうはいっても、大手の税理士法人の何社もが、直近の30万円の役員報酬しか使えない、と言っている。ということは、やっぱりそれが世間の見方で、税務署もそのように見てくるのではないか。本当に、大丈夫だろうか?」
言葉には、出さないものの、西郷社長の顔にはそのように書いてあります。
「社長、高額の退職金をもらいたいと言いつつも、実際にもらったら、税務署から否認をされないか、心配で仕方ないですか?」
「・・・えぇ・・・まぁ・・・」
「分かりました、それなら、「自己否認」という方法を使ってみましょうか?」
「何ですか?その自己否認というのは?」
「はい、つまり、こういうことです。今回、西郷社長は、功労加算金を含めて、1.8億円ほどの退職金を受け取るわけですが、その功労加算金(4,000万円)は、会社としても“高い”と思っています、ということで税務申告をするときに、会社が自分で否認するのです。税務署から指摘されるのが怖いなら、最初から自分で申告すればよいんですよ。」
「そんな方法があるのですか?でも、その方法いまいちよく分かりませんね。ということは、私の功労加算金(4,000万円)はもらえない、ということでしょうか?」
「いえ、社長は、功労加算金を受け取っていただきます。そして、その税率も、その他の金額(1.4億円)と同じく、安い所得税で済みます。」
「そうなんですか、じゃあ、普通に処理する方法と何が違うのですか?」
「はい、この4,000万円は、法人税を計算するときの損金に入れない、ということです。自己否認をしようがしまいが、受取人個人(社長)からすれば、退職金は退職金です。なので、自己否認をいくらしようが、いわゆる退職所得として、所得税は優遇されるのです。
ただし、法人税の計算するときには、この4,000万円は損金に入れませんよ、ということです。ただし、薩摩金属の場合は、この4,000万円を損金に入れても入れなくても、大赤字なので、法人税は発生しないのです。」
「へぇ、なんだか、まだよく分かりませんが、その方法なら、心配が取り除けそうです」
こうして、薩摩金属の社長、専務の退職金額は、社長、専務の希望通りに決定されたのです。
(福岡雄吉郎)
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