なぜ現金を過剰に積み上げるのか ③
今も多くはびこる悪しき財務体質は、
現預金を過剰に積み上げる、「現預金肥大症」です。
しかもその感染力は、強力です。
コロナ等の不安要素が高まるほど、
この症例を抱える財務体質の会社が、増えるのです。
③銀行取引がないと、急には借してくれない、の嘘
現預金を過剰に抱える会社の経営者に、
なぜそんなに現預金を持つ必要があるのか聞くと、
「借りれるときに借りておかないと、
借りたいときに銀行から借りれるかどうかわからない。」
とおっしゃる方がまだおられます。
「どうして借りれないかもしれないと思うのですか?」
と尋ねると、
「普段から取引のない会社に、貸さないんじゃないですか。」
と返答された社長がおられました。
「取引がない、というのは、融資を受けていない、
ということですか?」とおたずねすると、
「そうです。」とおっしゃいます。
「でも、取引口座があり、入出金の取引はあるでしょ。」と言うと、
「融資とそれは、別じゃないですか?」
と返ってきます。
借りようが、借りまいが、取引口座を開設するには、
決算書を数期分、その銀行支店へ提出しているはずです。
銀行審査の結果、
「この決算書なら口座を開設しても大丈夫だな。」
となったから、取引口座を設けることができたのです。
口座を開設した、ということは、
それだけで、信用を得ているのです。
その時点での財務状況は既に把握されているのです。
融資の有無に関わらず、返済能力が高い会社であれば、
銀行は貸したくてしかたがないのです。
いまどき、財務状況が良いのに、
「おたくには融資の実績がないから貸せません。」
などと、突き返す銀行はないのです。
中小企業の社長が、
そのような誤った理解に陥る要因のひとつは、
あたかもそうであるかのように書いている、
ミスリードの書籍やセミナーがあるからです。
「普段から借りていないと、銀行はすぐには貸さない。」
「借りれるときに借りれるだけ借りなさい。」
「借入だろうと、現預金が多い会社は評価が高い。」
などと、借金をあおる書籍が多数あるのです。
それは大きな間違いです。何の関係もありません。
銀行は、返済能力が高く、借金が少ない会社にこそ、
できるだけ多く貸したいのです。
日頃の融資実績がなくとも、すぐにでも貸したいのです。
そのような財務状況に、しておけばよいのです。
(古山喜章)
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