なぜ現金を過剰に積み上げるのか ④
今も多くはびこる悪しき財務体質は、
現預金を過剰に積み上げる、「現預金肥大症」です。
しかもその感染力は、強力です。
コロナ等の不安要素が高まるほど、
この症例を抱える財務体質の会社が、増えるのです。
④現預金は月商の2分の1にしなさい。
「現預金をたくさん持っているほうがいい。」
というのは、経営者の大きな勘違いのひとつです。
すると、
「では、どれくらいの現預金ならいいのでしょうか?」
と聞かれます。
「月商の2分の1にしなさい。」と、お答えします。
毎月、売掛金等、売上代金が入金されてくるのです。
「いやいや、うちは在庫も多いし、売掛金の回収期間も長いんです。
その割に払いが早いんです。だから月商の2分の1では厳しいんです。
この業界ではしかたがないですよ。」
などとおっしゃります。
業界の悪しき習慣に慣れ切って、変えようがないと思い込んでいるのです。
ならば、
在庫を減らし、回収期間を縮め、払いを遅くする、
ということに取り組めばいいのです。
業界がそうだから、とあきらめてしまえば、それまでです。
例え回収期間が長い業界であっても、
ライバルに比べて比類なき存在と言える、固有の強みがあれば、
悪しき習慣などに関わらず、相手は取引したいはずなのです。
ライバルと差別化された強みがないから、
皆と同じ、習慣どおりの扱いになるのです。
それに、決算書に記載される現預金は、
年度末の日の現預金残高です。
ならば、年度末の1日だけでも、
現預金を減らす努力をすればよいのです。
普段は運転資金で短期借入金を借りていても、
年度末の日だけ、いったん返済し、
新年度の初日にまた借りれば、決算書の現預金は減らせるのです。
銀行は、年度末や中間決算の時期が近付けば、
融資額を増やそうと、必死で営業活動に動きます。
あれはいわば、決算書対策です。
決算書の融資額、という数値を瞬間的にでも高くして、
金融庁に対して年度末の数字をよく見せようとしているのです。
あれはあれで、見習うべき行動力があるのです。
月商の2分の1で回る資金繰りにするべく、
在庫を減らし、回収期間を縮め、支払いを遅くする、
あるいは、
決算対策で一時的に現預金を減らす、
といったことに取組んでほしいのです。
そのどれにも取り組まず、うちの業界はしかたがない、
とあきらめるのは、
努力するライバルに後れをとり、
いつか致命傷になりかねないのです。
過剰な現預金が減れば、総資産は縮みます。
結果、自己資本比率は高まり、総資産経常利益率も向上するのです。
何かあった時のためにするべきことは、
現金を過剰に抱えることではなく、
いつでも銀行が貸したくなる、
強い財務体質にしておくべきことなのです。
(古山喜章)
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