なぜ現金を過剰に積み上げるのか ①
今も多くはびこる悪しき財務体質は、
現預金を過剰に積み上げる、「現預金肥大症」です。
しかもその感染力は、強力です。
コロナ等の不安要素が高まるほど、
この症例を抱える財務体質の会社が、増えるのです。
①その現預金、借金ですよ
「どうしてこんなに現預金を持つんですか?」
と言いたくなる会社が、この一年間、本当に多いのです。
月商の3倍、4倍の現預金を抱える会社が、目に付くのです。
最も多い理由は、
「コロナ融資で借りました。」というものです。
それに対して、
「借りなくても御社の事業はコロナ関係ないでしょ。
しかも、当座貸越枠があるから大丈夫でしょ。」
と社長に言います。
コロナの影響を受けておらず、
当座貸越枠を持っている会社まで、
コロナ融資で借りて現預金を積み上げているのです。
それでもなお、
「だって、金利ゼロですよ。」とおっしゃられます。
しかし、永遠にゼロではありません。
日本政策金融公庫であれば、3年目を越えると、
公庫が定める基準利率に戻ります。
その基準利率は、1.1%です。
私たちの金利相場感から言えば、高金利です。
それになんといっても、
「その現預金、借金ですよ。」ということです。
返済を伴うのです。そう言うと、
「5年間は返済なしの据え置きなので、
コロナが終息したら、すぐに返します。それでいいでしょ。」
と、反論する社長もおられます。
しかし、借りるのは簡単でも返すのは難しいのです。
その時に返す現金が残っているのか、ということもあれば、
銀行が返済を拒み、すんなり返せない、ということもあります。
「まあ、3年無利子だったから、一年くらい利息を払ってもいいか。」
などと、変な浪花節感情に流されることも、大いにありえます。
行きはよいよい帰りはコワイ、
無金利の融資は、財務体質を崩す、毒にもなるのです。
貸借対照表で言えば、左側、流動資産の現預金が増えます。
その一方、右側の負債が、増えるのです。
借金を増やしておきながら、
「現預金がこれだけあれば安心。」
と言い張るのは、その一方で増えている借金が見えず、
財務、特に貸借対照表をご理解されていない証拠です。
現預金肥大症の会社は、
総資産経常利益率も、自己資本比率も、悪化します。
借金が増えた分、総資産が膨れるのですから、当然そうなります。
せっかく銀行交渉に強い決算書を維持していた会社も、
安易なコロナ融資で一気に財務体質を崩しているのです。
銀行からの格付け(スコアリング)を、落とす結果になるのです。
決算書はこれから先5年間、活用する機会があります。
「これはコロナの為でこの時だけ、自己資本比率が悪いです。」
と言っても、
決算書データを活用する銀行融資部まで、その声は届きません。
経営指標の結果で判定される、だけなのです。
持たなくてもよい現預金を、借りてまで過剰に抱える会社は、
一刻も早く、返済の動きを始めてほしいのです。
(古山喜章)
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