過剰からの脱却 ⑤
中小企業の決算書を拝見していると、
「もっと減らしなさい!」
というものが多くあります。
過剰なのです。
過剰であることが、財務を蝕んでゆくのです。
⑤固定資産の過剰
持つ必要のない固定資産を持つな、
と言い続けております。
人材派遣をしているある会社が、
本社事務所の入る土地・建物を自社物件で抱えていました。
当然、貸借対照表の固定資産は土地・建物の分、大きくなります。
固定負債には、資金調達時の長期借入金がどっしり構えます。
人材派遣は、サービス業です。
サービス業の長所は、固定資産が不要なことです。
いわば、それが強みのひとつです。
借り物の事務所で何も問題ないはずです。
なのに、借入金をしてまで土地・建物を自社で構えると、
まず、返済原資が必要になります。
但し、土地は減価償却ができません。
法人税を払った後の、当期純利益が返済原資となるのです。
稼いだお金から、法人税を払い、
銀行への返済&金利支払いをしなければなりません。
これでは、お金が残りません。
土地・建物を借り物ですませば、
賃借料が発生するものの、損金計上できます。
その分、法人税の発生を抑えられます。
借入がないので、返済も金利も要りません。
自前で土地・建物を持つよりも、お金が残るのです。
土地・建物ばかりではありません。
本業にまったく関係のない、美術品や上場株式を、
多額の借入金をしてまで購入し、
固定資産を過剰に膨らませている会社も度々見かけるのです。
社長の個人的趣味・嗜好で固定資産が膨らんでいるのです。
上場会社なら、忠実義務違反で取締役解任にあたることを、
中小企業では平然と行われているのです。
社長だから何をしてもよいのではありません。
社長といえども、取締役の一人です。
定款に定めた本業に注力するため、
就任承諾書に署名し、登記しているのです。
法の下の人格である、法人と言う会社に属しているだけなのです。
優先すべきは社長自身ではなく、会社の法人格なのです。
そのことを忘れて固定資産を過剰に抱える会社は、
それだけで、倒産に近い会社といえるのです。
(古山喜章)
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