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2021年9月

2021年9月30日 (木)

賢い資金繰り ④

経営にはマサカの坂がつきものです。

その際にまず気になるのが、当面の資金繰りです。

どんな業界であろうと、長く経営を続けていれば、

「マサカの坂」に必ず見舞われる時が来るのです。

そのためのお金の備えは、今のうちに済ませてほしいのです。

災害は、忘れたころにやってくるのです。

 

④給与支払い日を伸ばす

 

意外に見直しされにくいのが、給与の支払い日です。

給与の締め日と支払い日は、各社さまざまです。

他社との比較をする機会がないためか、

現状が当たり前になっているのです。

 

しかし例えば、

月末で締めて翌月10日や15日で給与を支払う会社と、

月末で締めて翌月20日、25日に給与を支払う会社と、

では、資金繰りが大きく異なるのは明らかです。

 

給与は毎月発生する、最も大きい支払いコストです。

その支払が早いより、遅いほうが資金繰りは楽になるのは、

あたりまえなのです。

20日や25日の支払であれば、それまでに入金がある可能性が大きいです。

毎月の入金のあとに、給与支払いを行う形にすればよいのです。

 

給与支払い日を変えようとすると、

「しかし、給与振込日を後ろにずらすとなると、

 従業員がいやがるでしょう。

 ローンの返済や自動引き落としなど、不足したらどうするのか、

 という心配をしますからね。」

といった声が必ずでてきます。

 

当然、気になることと思います。

なので、給与支払い日を変えるときは、

賞与支給と絡ませて実行します。

賞与を支給して、

返済や引き落としに影響がないタイミングで、

給与支給日を後ろにズラすのです。

そうすれば、残高が不足する、という心配もなくなります。

 

実際にこれまでいくつもの会社で、給与支給日を変えてきました。

が、社内でトラブルになったことは一度もないのです。

実行された会社の財務担当はみなさん、

「資金繰りが一気に楽になりました!」

「余計な短期借入金をしなくてもよくなりました!」

「従業員が何か言ってきたときのQ&Aを用意していましたが、

 ぜんぜん使うことがなかったです。」

などとおっしゃいます。

 

資金繰りは、お金の入りと出の管理です。

そのタイミングを見直すだけで、

資金繰りが楽になることもあるのです。

自社の給与支給日が資金繰りに影響していないか、

再確認してほしいのです。

 

(古山喜章)

2021年9月29日 (水)

賢い資金繰り ③

経営にはマサカの坂がつきものです。

その際にまず気になるのが、当面の資金繰りです。

どんな業界であろうと、長く経営を続けていれば、

「マサカの坂」に必ず見舞われる時が来るのです。

そのためのお金の備えは、今のうちに済ませてほしいのです。

災害は、忘れたころにやってくるのです。

 

③プリペイドカードで前金を増やす

 

会費や定額に加えて、

資金繰り対策として増えているのが、プリペイドカードです。

前金でお代を回収できるのですから、

資金繰りをラクにするにはピッタリの仕組みです。

 

古くは喫茶店のコーヒーチケットや、

英会話やゴルフスクールなどのレッスンチケットも、

プリペイドカードと同じ発想です。

それがデジタル化され、カードやスマホアプリで、

導入・運用できるようになりました。

 

“プリペイドカード 導入”として検索すれば、

取り扱い業者がズラズラ出てきます。

かつては大企業だけが導入しているイメージでしたが、

キャッシュレス化が進む中、

コロナ禍もあとおしして、導入コストは大きく下がりました。

中小企業でも導入可能なレベルにまでなってきたのです。

 

私自身、スイカやエディ、スタバなど、

ここ10年以上、プリペイドを大いに利用しています。

やはり会計が早いのと、手元の現金を減らせれる、

というのは、ユーザーにとっても大いに利便性があるのです。

 

それに、会費の幽霊会員同様、

プリペイドカードにも運用側にありがたい恩恵があります。

前金で払った金額分、使い切らないお客が大勢いる、

ということです。

特にスイカやイコカなど、

交通系の放置金合計は、かなりの高額になるはずです。

その他のプリペイドカードにおいても、同じことがあるはずなのです。

 

また、最近のプリペイドカードはデジタル化されているので、

顧客動向データを集めやすいのもありがたいです。

多くは顧客登録時に年齢・性別、連絡先のアドレスなどを

登録するので、顧客データ分析や情報発信には、うってつけなのです。

加えて、ポイントカードとも連動しやすく、

1枚のカードで一体化しているパターンも増えてきました。

 

数多くのフランチャイズ事業を営む、ある地方の会社では、

各店舗共通で利用できるプリペイドカードを作り、

顧客の囲い込みに成功していました。

ポイントカードも共通なので、その地域における、

自社グループの店舗利用者が、どんどん増えたのです。

“どうせならポイントのたまる店を利用しよう。”

という顧客心理を、見事につかんだのです。

 

このように、一般消費者を対象とするご商売なら、

プリペイドカードの活用は、

ぜひとも検討していただきたい案件です。

資金繰りにも有効で、顧客ニーズ分析や囲い込みにも、

大いに活用できるのですから。

 

(古山喜章)

2021年9月28日 (火)

賢い資金繰り ②

経営にはマサカの坂がつきものです。

その際にまず気になるのが、当面の資金繰りです。

どんな業界であろうと、長く経営を続けていれば、

「マサカの坂」に必ず見舞われる時が来るのです。

そのためのお金の備えは、今のうちに済ませてほしいのです。

災害は、忘れたころにやってくるのです。

 

②会費・定額費用が増えれば楽になる

 

日々の資金繰りが楽な業種・業態があります。

例えば、日銭が入る業種です。

パチンコホール業、飲食店、小売店などです。

但し、飲食・小売は百貨店などのテナントだと、

百貨店を通じての入金なので、日銭は入りません。

それでも入金は月2回など、比較的早い回収です。

 

日銭が入る商売以外で資金繰りが楽な業種・業態だと、

前金でお代を受け取るパターンです。

保険、学校、不動産賃貸、自販機、ネット通販、

エンタメ系チケットなどは、ほぼ前金です。

集客さえできれば、運転資金としての調達は不要です。

 

要は、そのような業種・業態でなくても、

何らかの形で前金のように、先にお代を受け取れないか、

ということを言いたいのです。

 

例えば会費です。

顧客に対して、有料会員制度を設けて情報発信をしっかり行い、

会員には優遇特典・サービスを提示する。

通常会員とプレミアム会員を作り、差をつける。

顧客は自分にとってメリットのある特典であれば、

有料であっても、会員になってくれます。

自社でそのような会員制度を作れないか、ということです。

 

あるいは、定額費用のサービス、

いわゆる、サブスクリプションです。

一定のサービス利用に対して、毎月定額を支払う、というパターンです。

アマゾンや動画配信などは、この方式で資金を確保しました。

それに、月額定額料金の場合、

最初に入会したまま、さほど活用することなく、

解約もせずに放置している、ということが往々にしてあります。

 

定額サービスをフィットネスで展開している社長が言いました。

「幽霊会員が半分くらいいるんで、これが助かるんです。

 特にアナウンスはせず、こちらも放置しています。」

とのことなのです。

定額でお得な商品・サービスでも、全員が有効活用することはなく、

経営サイドにとっても、大いにメリットがあるのです。

 

全部がムリでも、一部の商品・サービスにおいて、

会員制度や定額サービスを設けて運用することができれば、

資金繰りは大きく変わるのです。

資金繰りに厳しい会社ほど、検討してほしい項目なのです。

 

(古山喜章)

2021年9月27日 (月)

賢い資金繰り ①

経営にはマサカの坂がつきものです。

その際にまず気になるのが、当面の資金繰りです。

どんな業界であろうと、長く経営を続けていれば、

「マサカの坂」に必ず見舞われる時が来るのです。

そのためのお金の備えは、今のうちに済ませてほしいのです。

災害は、忘れたころにやってくるのです。

 

①売上回収期間を縮めておく

 

売掛債権回収期間、という経営指標があります。

(受取手形+売掛金)÷平均月売上高=〇〇ケ月

売ったけれども、

まだ使えるお金になっていない金額が月商の何倍あるのか、

という指標です。

 

この数値が大きいほど、資金繰りが厳しく、

短期借入金を運転資金で借りるなど、資金調達が必要になります。

総資産は膨らみ、余計な金利も発生します。

せめて1.5ケ月以内にはしたい経営指標です。

 

特に、受取手形の場合など、現状は最長120日なので、

受取手形が存在するだけで、回収期間が長くなります。

なかには、

月末に締めて2ケ月後に、120日の手形で受けとる、

という会社もありました。

そうなると、売って6ケ月しないとお金が入ってこないのです。

資金繰りがよくなるわけがありません。

 

とはいえ、得意先の全てにおいて、回収期間が長いわけではありません。

多くの場合、特に回収が遅い、という会社が数社あり、

その会社が大きな売上高を占めていたりするのです。

 

ある会社で、

「受取手形をやめてまずは売掛金に変えてもらおう。

 月末締め後、手形で90日を売掛金で60日にお願いしよう」

と動き始めました。

約束手形は5年後の2026年には廃止になります。

そのことも含めて文書で伝えながら、

社長みずから、先方の社長に条件変更の交渉に参じたのです。

 

すると、その社長が言ったのです。

「えっ、今どきそんなことになっていましたか!

 それは失礼しました!

 もう手形はやめて、月末締めの翌月末払いにさせてもらいます。」

と、考えていたよりも良い条件に、すんなり切り替わったのです。

 

あとから聞くと、

これまでにも営業担当者が先方の担当者に、

条件交渉の働きかけをしていたそうなのです。

しかし、そんなことは先方社長の耳に入ってもおらす、

うやむやに済まされていたのです。

営業担当者は、取引を切られたくない、

先方担当者は、支払い条件を悪くする報告をしたくない、

ということで、お互いに表面的なやりとりになっていたのです。

 

その売り先は、売上高の上位5社に入る取引先でした。

その回収期間が縮まったのです。

後日、資金繰りはどうか、社長に聞いてみると、

「いやぁ、あそこの回収が縮まっただけで、

 資金繰りがいっぺんに楽になりました!

 他の取引先にも交渉をしていきます!」となったのです。

 

「うちの業界では受け入れてもらえない」

「前にもお願いしたけど、全然ダメだった。」

等と決めつけずに、世の中は変わってきているのです。

あるいは、なれあいの交渉で済まされていたかもしれません。

マサカの坂に備えるためにも、

もう一度、回収期間の短縮に、取り組んでほしいのです。

 

(古山喜章)

2021年9月24日 (金)

利益が出すぎて困る③

業態が、大手企業のサプライヤー(協力業者、下請)の場合、

利益が出すぎてしまうと、

「お前のところは、こんなに利益が出てるじゃないか。

それなら、もっとコストダウンできるだろう。」

という、プレッシャーが強くなるのです。

 

彼らはどんな対策を取っているのでしょうか?

 

(事例2)平野化成(仮)の場合

 

平野化成は、売上の70%を一社の得意先が占めています。

卵が一つの籠にもられた状態で、

しかも、株式も10%持たれており、

株主総会での決算報告も求められています。

 

元請との関係は、いまのところ良好ですが、

経営陣に油断はなく、

「いつどこで、他のライバルに仕事を振られるか、

わからない」と危機感も抱いています。

 

まして、属している業界に好況の波が押し寄せており、

営業利益として10億円以上は出てしまう状況です。

となると、当然、「儲けすぎ!」と

コストダウンを要求され、

また、元請から見れば、内製化も選択肢に入ってきます。

 

そこで、考えたのが、

「引当金」です。

 

引当金というのは、損益計算書上の費用のことで、

将来の損失に備えて、

今のうちから、費用に計上しようというものです。

 

税金が減ることはありません。

損益計算書上の見た目の利益を減らす、

というだけですが、平野化成のような会社には

メリットがあるのです。

 

将来の工場集約、移転に備えて発生する損失について、

「修繕引当金」として、2億円ほど計上します。

そうすると、利益は10億円から8億円に抑えられるのです。

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月22日 (水)

利益が出すぎて困る②

業態が、大手企業のサプライヤー(協力業者、下請)の場合、

利益が出すぎてしまうと、

「お前のところは、こんなに利益が出てるじゃないか。

それなら、もっとコストダウンできるだろう。」

という、プレッシャーが強くなるのです。

 

彼らはどんな対策を取っているのでしょうか?

 

(事例1)辻工業(仮)の場合

 

辻工業は、大手自動車メーカーのグループから、

特定部分の処理を請け負っています。

これらの巨大メーカーでは、

サプライヤーに対して、決算書の提出を求めてきます。

株主でなくても、決算情報を開示するよう、要請するのです。

 

といっても、決算書全部ではなく、

彼らが作成しているフォーマットに、

決算数値を記入する形式で、情報開示を行っています。

 

このときに、たくさんの利益(例えば、営業利益10億円以上)を

あげていると、不定期にコストダウンが来るというのです。

かといって、赤字でもいけません。

 

メーカー(元請)から見れば、

つぶれそうなところに発注するのは危険という判断になります。

 

この意味では、メーカーとしては、

利益が出すぎている会社よりも、

赤字の会社を注意深く観察しているようです。

 

とはいいつも、巨大メーカーが、

何百、何千というサプライヤーを

すべて細かくチェックしているかというと、

そういうわけでもありません。

 

なので、辻社長(仮)がこれまでとっていた対策は・・・

「本当のことを伝えない」でした。

 

つまり、利益がたくさん出ていても、

少なくして過少に申告していたのです。

 

長年そうやって過少申告を重ねていても、

結局、メーカー側から何か指摘を受けたことはありません。

 

これはこれで、一つの方法ですね。

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月21日 (火)

利益が出すぎて困る①

「利益が多すぎる」

 

このように聞けば、

ほとんどの方は、「なんともうらやましい!」

と思います。

 

ところが、利益を出している会社の経営者は、

それほどでもないのです。

利益が多すぎると、真剣に悩まれます。

 

「納税額が増えるからね・・・」

と思われた方、正解です。

 

「何を悩む必要があるのか?

利益が出るということは、それだけ、

会社の商品力がある証拠。

堂々ともらえばよいでしょう。」

端からみると、こう考えます。

 

確かにそれも正解です。

 

しかし、喜んでばかりいられないのです。

 

業態が、大手企業のサプライヤー(協力業者、下請)であれば、

どうなるでしょうか?

 

「お前のところは、こんなに利益が出てるじゃないか。

それなら、もっとコストダウンできるだろう。」

という、プレッシャーが強くなるのです。

 

私の顧問先にも、協力業者という立場で、

10億円以上の営業利益をたたきだしている会社が複数あります。

 

今期もおかげさまで、絶好調です。

では、彼らはどんな対策を取っているのでしょうか?

(福岡雄吉郎)

2021年9月17日 (金)

株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある⑤

最近、中小企業の株主構成の内訳に、

80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。

お元気なのは何よりなのですが、

事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、

なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。

 

⑤銀行や税理士を信じてしまう

 

私たちは、

高齢者が保有している株式が過大な相続税の対象にならないよう、

また、その後の争族の火種にならないよう、

他ではあまりない提案をさせていただいております。

税法や会社法を賢く活用した、ICO独自の対策提案です。

 

ところが、経営者にとっては

聞いたことのない提案であるがために、

他の税理士や銀行にまで聞いて、

内容の是非を確認したがる方が時折現れるのです。

 

「そんな高額な退職金は税務署から否認される、と税理士が言ってます。

 他の税理士に聞いてもみんなダメだ、と言うらしいです。」

これが最も多い例です。

高額退職金を扱ったことのない税理士が何人集まっても、

結局、反対するだけです。

自分ではやったことがないし、

経験のある税理士も周囲にいないので、わからないのです。

なのに、“わからない”ではなく、“ダメだ”になるのです。

 

それでも、

「長年のおつきあいのあの税理士が言うのだから、

 提案を受けた方法で本当にいいのだろうか。」

と不安になってしまうのです。

 

あるいは、種類株式を活用する方策を提案したあと、

取引きの長い銀行の事業承継部門に聞いた方がおられました。

「提案いただいたことが可能なものか、銀行に聞いてみたら、

 かなりリスクがありグレーではないか、と言われました。」

との回答を得て、対策の実行をためらわれたのです。

かといって、何がどうハイリスクなのか、よくわからないのです。

そもそもよく理解していない経営者が銀行に説明するから、なおさらです。

 

それだけでなく、

銀行がお金を貸すスキームの提案を受け、

一時、その方策に気持ちが傾いたのです。

我々からすれば、多額の借金を背負うほうが、よっぽど大きいリスクです。

 

要は、付き合いが長いとういだけで相談相手を間違い、

最適策を見誤ってしまう、というケースがあるのです。

多くの場合、間違いを正し、私たちの提案を受け入れてくれますが、

そうではないケースもあります。

知らない間に、税理士や銀行の提案を信じて実行しているのです。

それはもう、残念でしかありません。

株や事業承継の問題解決は、

絶対に相談相手を誤ってはいけないのです。

 

(古山喜章)

2021年9月16日 (木)

株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある④

最近、中小企業の株主構成の内訳に、

80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。

お元気なのは何よりなのですが、

事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、

なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。

 

④占い師に頼る女性経営者

 

ある地方で不動産賃貸業を営む、

80歳代の女性オーナー社長から相談を受けました。

「株を娘に継がせたいがどうすればよいかわからない。」

とのことでした。

その女性オーナー社長はご主人を早くに亡くされ、

相続で株式100%を得たまま、自らが社長として、

不動産賃貸業を継続されてきたのです。

 

とはいうものの、80歳代の半ばも近づき、

回りの経営者や司法書士から促されて、

“確かにそろそろ”と思い、株式対策の相談に動いたのです。

 

決算書を拝見すると、さほど大きな商いでもなく、

そのオーナーが7~8千万円の退職金を受け取れば、

株価は額面程度になる、という状況でした。

退職金の額は、

月額報酬と取締役在籍年数からみて、なんの問題もない金額です。

その後、後継者である娘に贈与&譲渡で株式を移せば、

余計な経済的負荷はなく、完了できるものでした。

 

その旨を女性オーナー社長に伝え、

手順を文書で示してお渡ししました。

そう難しい案件ではなく、最初に相談を促した、

他社の経営者や長く関わる司法書士にアドバイスを受ければ、

十分に対応できるものでした。

 

数か月後に、その女性オーナー社長を私に紹介した経営者から、

連絡が入りました。

“前にお願いした件なんですけど…。”

“どうなりました?株式はもう娘さんに売りましたか?”

と尋ねました。

“結局、そのまま何も変わらずなんですよ。”

“どうして?何かネックになることでもあるの?”

“いやぁ、言いにくいんですが…。”

となり、何があったのかお聞きしました。

 

すると、

“あのあと、長年いろいろ相談している東京の占い師に、

 提案内容を進めていいか聞きに行ったら、

 2年待ちなさい、と言われて止まっちゃったみたいです。”

ということだったのです。

「占い師に聞いた結果、売らない。」

という、おやじギャグのような結末だったのです。

 

こうなると、手の施しようがありません。

あと半年ほどで2年になりますが、おそらくまた、

その占い師に聞きにゆくのだと思われます。

でまた伸びると、その社長はもう90歳突入です。

 

これまで、占い師を頼りにする経営者は数名おられましたが、

やはり女性社長が多いです。

しかし、占い師は事業承継の専門家ではありません。

なんの知識もないのです。本人は満足できても、

その影響を受ける親族には、迷惑でしかないのです。

占いは参考にしてもいいですが、信奉するものであってはならないのです。

 

(古山喜章)

2021年9月15日 (水)

株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある③

最近、中小企業の株主構成の内訳に、

80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。

お元気なのは何よりなのですが、

事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、

なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。

 

③とにかく手放したくない

 

非上場の中小企業における高齢者株主の場合、

その多くの方は、経営にまったくかかわっていません。

“祖父から兄弟均等にわけてもらった”

“主人が亡くなって相続で受け取った”

など、何らかの理由で株式の意味もよくわからずに、

持っているのです。

 

株主の整理を進めてゆくうえで、

なかなかやっかいなのでが、このような方々なのです。

後継者や会社が買い取る、ということを提案しても、

かたくなに

「手放すのはいや」と言い張る方が時々おられるのです。

 

その理由もさまざまです。

「これはお父さんが遺してくれた形見だから、手放すわけにはいかない!」

「年金以外に、配当金が振り込まれるのが楽しみだから、手放さない!」

「この株は私が死んだら孫にあげることにしている!」

「おしゃれして株主総会に出席するのが唯一の楽しみだから、売れない!」

「人から言われて売るのはイヤ!」

「株主、という存在でありたい!」

「老後を考える年齢になってから検討します!」

 

等々、80歳代恐るべし、という理由が飛び出してくるのです。

その反面、どこかに

「もっと大切にあつかってほしい」

「もっと自分の存在を気にしてほしい」

「へんに年寄り扱いしないでほしい」

という高齢株主の密かな想いを感じることも、しばしばなのです。

 

特に、その方々と後継社長が少し疎遠になっているときに、

このような事例が勃発することが多いのです。

“非上場企業だから株主を意識することはない”

といっても、整理が近づいている株主とは、

すこし親密な関係を築いておいてほしいのです。

いざ買い取る段階で困るのは、結局、後継社長なのですから。

 

(古山喜章)

2021年9月14日 (火)

株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある②

最近、中小企業の株主構成の内訳に、

80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。

お元気なのは何よりなのですが、

事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、

なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。

 

②最新の相続対策を理解できない

 

ある会社で、後継社長の母親である、

80代半ばの女性が40%強の株式を保有していました。

全体の3分の1以上なので、

特別決議の拒否権を持っている状態です。

「母親は経営にはまったくタッチしていないので、

 拒否権を使うこともないし、

 そもそもそんなこと、理解していないです。

 ただ、このまま亡くなると、相続税が大変なんです。」

と、後継社長が相談に来られたのです。

 

その会社は総資産に占める自己資本比率が80%を

超えていて、株価が高額になっていたのです。

40%強もの株式が相続財産になれば、

相続税額が一気に跳ね上がってしまう状況だったのです。

 

対策として、種類株式の活用を進めることになりました。

母親が持つ普通株式を、議決権が無く、

優先配当と分散防止の取得条項を付与した種類株式に転換し、

経営に関わる他の方に譲渡してもらうのです。

 

社長から連絡がきました。

「図や資料を使っていくら説明しても、

この方策を理解できないみたいで、

最後には、お前の言うことはあてにならない、

て言うんですよ。」

その社長は母親との折り合いがあまりよくはなく、

株式対策もそのためにズルズルと先延ばしになっていたのです。

そのツケがやってきたのです。

 

「誰の言うことだったら、お母さまは信用しますか?」

と社長に尋ねました。

「私の姉の言うことなら、だいたい信用します。」

となり、お姉さまに事情を説明して、

お姉さまからお母さまに、話しをつけてもらいました。

あまりにすんなり進んだので、社長も驚きました。

「結局、誰から聞くか、ですよね。

 いまだに母親は種類株式のことは全く理解していないと思います。」

とは、社長の言葉です。

 

80代半ばで、

経営に関わらない方に“種類株式”と言っても、

とうてい理解などできません。

内容を理解できて納得できるかどうかではないのです。

誰の言うとおりにすれば納得できるか、なのです。

そうなると、親族かどうかに関わらず、

最も信頼できる身近な人の言うことなら納得できるのです。

高齢者の株主の対策を進めるには、

そのような信頼できる人物を味方につけることが、

事をスムーズに進める要点となる場合があるのです。

 

(古山喜章)

2021年9月13日 (月)

株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある①

最近、中小企業の株主構成の内訳に、

80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。

お元気なのは何よりなのですが、

事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、

なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。

 

①コロナ禍で会えない

 

ある会社で、後継者の母親である、

80代後半の女性が株を30%保有していました。

残りの70%はすでに後継者が株を持っています。

先代からの相続で、母親も株を持っていたのです。

 

後継者が70%を保有しており、支配権もあります。

しかし株価が高く、母親が30%を持ったままだと、

かなりの相続財産に評価されてしまうのです。

そこで、種類株式の活用と一部は会社での買取で、

母親が保有する株をなくそうとしたのです。

 

「母親に会えないんです!」

と、後継者から連絡が入りました。理由を聞きました。

「介護施設に入居しているんですが、コロナで面会出来ないんです!」

感染対策で家族との面談をシャットアウトしており、

母親に会って、株を手放すことを説明しようにも、

いつになったら会えるのか、メドがたたない、というのです。

「とりあえず、緊急事態宣言が明けたときに検討します、

 て施設の方が言うんですが、こっちは心配で仕方がないです!」

 

まさかこんなことになるとは思っておらず、

いつでも母親にお願いして株対策を進めればよい、

慌てることはない、くらいにしか考えていなかったのです。

これもマサカの坂、なのです。

 

会えないとなると、説明もできないし、

署名・捺印など、手続きを進めることもできなくなります。

何より、

“もしも感染してそのまま亡くなったら…。”

“会えないうちに、逝ってしまったら…。”

と思うと、その後継者は気が気でなく、

大切な本業に集中できない状態に陥っていたのです。

 

結局、緊急事態宣言が明けた折にようやく会うことができ、

予定していた対策を無事に進めることができたのです。

しかし、その後また緊急事態宣言に入り、

以前と同様に会えない状態に陥りました。

「とにかく会える時に進めれてよかったです。ホッとしました。」

とは、後継者の言葉です。

 

高齢者でなくても、株対策が必要な株主がコロナ感染で入院、

となると、対策は停滞に陥ります。

だから、先延ばしにせず、

できる株式対策は、早めに取り組んでほしいのです。

 

(古山喜章)

2021年9月10日 (金)

コロナ禍でも攻める⑤

ここで、D社の事例をご紹介します。

 

D社は、同業であるP社をM&Aしようとしていました。

もともと取引関係があった両社ということもあり、

M&Aの仲介会社は通さずに、M&Aをしようと進めていました。

 

本来であれば、売手から声をかけているので、

立場的には買手優位のように思えますが、

年齢は、買手D社の社長が2回りほど若く、

売手P社の社長も我が強いところもあり、

どちらかといえば、売手優勢の進め方となっていました。

 

本来とは異なる形で、デューデリジェンスを進め、

それも何とか終わりました。

 

総額3億円でM&Aをすると決まり、

その買収資金の調達についても、

銀行に入ってもらって、諸々調整が進みました。

 

来月には契約を、という段階になり、

M&Aの売買契約書を作成するところまできました。

 

M&Aの契約書というのは、

通常の株式の売買契約とは異なり、

「表明保証」といって、

買手、売手に色々なことを“誓います”といって、

宣誓してもらったうえで、売買することになります。

 

もし、宣誓したことが、あとあとウソだった、

ということであれば、賠償問題になるように、

契約書を仕込むのです。

 

特に、売手は、不都合な真実を隠しがちなので、

売手にはいろいろなことを宣誓してもらうのです。

 

そのなかで、

「事業のうえで、必要な許認可は全て取っています」

という文言がありました。

 

M&Aの話がスタートした当初、

買手D社は売手P社から、

「許認可関係は特に問題ない」と口頭で聞いていましたが、

 

最後のこの段階では、口頭ではなく、

書面にして宣誓してもらう(捺印してもらう)

もし嘘をついていたら賠償してもらう、

というプロセスが必要になります。

 

すると、実は、建物全体の建築申請を取っていなかった、

ということが発覚したのです。

 

「そんなことは、聞いていない。まさか・・・」

買手は、買収撤回を申し出たのです。

 

これまで、たくさんの時間、費用、エネルギーをかけて

準備してきた双方でしたが、

何とも残念な結果になってしまいました。

 

最初から然るべき専門家を入れていれば、

土壇場でひっくり返らずに、

もっと前の段階でブレイク(破談)していたと思います。

 

色々と勉強になる一件でした。

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月 9日 (木)

コロナ禍でも攻める④

コロナショックが始まり、

かれこれ1年半以上が経っています。

 

まだまだ収束する気配が見えませんが、

悲観的に考えて、悲観的に考えていても

状況が良くなることはありませんので、

将来に向けて動かなくてはいけません。

 

B社の事例でもお話しましたが、

これから、M&A、不動産物件が出回り、

業績のよいところには、「買ってくれ」と

各方面から声がかかってきます。

 

ここで、D社の事例をご紹介します。

 

D社については、当初の目論見通りいかなかった、

ということで、一つの参考にしていただきたいと思います。

 

D社は、同業であるP社をM&Aしようとしていました。

もともと取引関係があった両社ということもあり、

M&Aの仲介会社は通さずに、

M&Aをしようと進めていました。

 

実は、売手のP社は、

これまでM&Aの仲介会社から、

買手候補を紹介してもらっていました。

 

それでも、「何か違う」ということで、

最終的に、もともと旧知の間柄だったD社に、

話をもっていったのでした。

 

本来であれば、売手から声をかけているので、

立場的には買手優位のように思えますが、

年齢は、買手D社の社長が2回りほど若く、

売手P社の社長も我が強いところもあり、

どちらかといえば、売手優勢の進め方となっていました。

 

私が、一番違和感を覚えたのは、

デューデリジェンス(買収監査)のやり方でした。

 

通常、デューデリジェンスは、

買手が買手の費用で、売手の決算書を精査、調査します。

 

ところが、今回は、

売手P社が、自ら銀行にお願いして、

売手の費用でデューデリジェンスを実施したのでした。

 

デューデリジェンスする側も、

売手からお金を頂いている以上、

ある程度、売手の意向に沿う形(つまり、あまり掘り下げない)で、

監査を進めることになります。

 

こうしたことが、後々に響いてくるのです(つづく)

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月 8日 (水)

コロナ禍でも攻める③

コロナショックが始まり、

かれこれ1年半以上が経っています。

 

まだまだ収束する気配が見えませんが、

悲観的に考えて、悲観的に考えていても

状況が良くなることはありませんので、

将来に向けて動かなくてはいけません。

 

事例:学習塾C

 

北関東で学習塾を経営するC社、

昨年のコロナ禍にあっても、業績は絶好調でした。

 

他塾が休校等するなか、

万全のコロナ対策を行って、継続して開校して、

授業を途切れさせないように運営を行いました。

 

もちろん、授業の質、先生の質などもありますが、

結果的には、周囲の学習塾に比べて独り勝ちでした。

 

このC社は、定期的に新聞広告に折込チラシを入れていますが、

昨年は、いかにコロナ対策をしていて安全か、

これを保護者にアピールするようなチラシを積極的に投入しました。

 

コロナ対策の10の安心・安全などと銘打って、

ホワイトハウスでも採用されている紫外線殺菌灯を導入した、

など、「ここまでやるのは県内初」などと、

上手なアピールで、保護者に訴えかけることに腐心しました。

 

他社が営業、開校にしり込みする中、

勇気をもって開校したことが、

結果的にこのC社の存在感を更に高めることになったのです。

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月 7日 (火)

コロナ禍でも攻める②

コロナショックが始まり、

かれこれ1年半以上が経っています。

 

まだまだ収束する気配が見えませんが、

悲観的に考えて、悲観的に考えていても

状況が良くなることはありませんので、

将来に向けて動かなくてはいけません。

 

民間金融機関のコロナ特別融資は今年の3月まで、

さらに政府系(政策金融公庫、商工中金)のコロナ特別融資も、

今年で制度終了の予定です。

 

コロナ特別融資は、3年間無利子、

最大5年間据置きですが、

いずれは返済する時期がやってきます。

 

ということは、これから経営が立ち行かなくなる会社が

多く出てくるでしょう。

となると、増えてくるのは、M&A(救済型)です。

 

経営、資金繰りが厳しくなった会社が

業績の良い会社に救いを求めるような形で、

金融機関等からM&Aの案件が持ち込まれる場面も増えるでしょう。

 

その際は、B社(倉庫業)の事例を参考にしてください。

B社は、昨春に高額の不動産を取得しました。

当初、不動産の仲介会社から提案された金額から、

5億円ものディスカウントに成功しました。

 

契約前の不動産業者(仲介会社)とのやり取りは、

次のような感じでした。

 

「他社がたくさん興味を示しています。

他社は、御社よりも高い●億円出すと言っていますが、

御社優先に動いています!

  • 日までに買付証明を出してください!」

などと急かされます。

 

ここで、B社は冷静に動きました。

「コロナだから、不動産を狙っている他社は苦しくなっているかもしれない。

不動産屋が急かしてくるのも、先方が焦っているからかもしれない。

ここは一歩立ち止まって、冷静に抑えて金額を入れよう。」

 

その後、いろいろと厳しい交渉を経て、

当初提示金額から5億円ものディスカウントに成功したのです。

 

“期限間近”“期間限定”“最優先”“貴方だけ”

このような言葉に日本人は弱いものです。

 

これからM&A、あるいは、B社のように不動産で、

「買いませんか?」という案件が現れるかもしれません。

 

その際は、前のめりにならずに、一歩立ち止まってください。

特に、「今週までに」「今月までに」などと、

期限を急かすような交渉は、一段とお気をつけください。

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月 6日 (月)

コロナ禍でも攻める①

コロナショックが始まり、

かれこれ1年半以上が経っています。

 

会社によって悲喜こもごも、

過去最高益という会社もあれば、

飲食、ホテル、観光系には、

体力勝負が求められています。

 

経営者の考え方も、それぞれで、

血圧が高く不安で夜も眠れないという経営者もいらっしゃれば、

大変な状況にはあるものの、飄々として、

コロナどこ吹く風(というように見える)の経営者もいらっしゃいます。

 

まだまだ収束する気配が見えませんが、

悲観的に考えて、悲観的に考えていても

状況が良くなることはありませんので、

将来に向けて動かなくてはいけません。

 

(事例1)ホテル業A

 

A社は、ビジネス系ではなく、観光系のホテルです。

コロナ禍で業績は大きく落ち込み、

売上は、30%以上も落ち込み、

営業利益も当然赤字に転落してしまいました。

 

それでも、この経営者は、

攻めることを忘れず、

今年に入り、ホテル内に、

新たにベーカリーをオープンさせました。

 

投資額は、5000万円以上はかかりますが、

「事業再構築補助金」を申請して、見事に合格。

かなりの部分を補助金で賄うことができました。

 

ちなみに、この補助金は、利益にはなりますが、

圧縮記帳をすることで、その分損金に計上できます。

 

さて、オープンさせたベーカリーですが、

オープンして4ヶ月以上経っても

連日満員で想像以上の活況です。

 

コロナ禍でも攻める経営者、ご立派です。

 

(福岡雄吉郎)

2021年9月 3日 (金)

現金が過剰な会社の共通点 ⑤

「現金も在庫と同じ。過剰に持つな!」

と言い続けております。

それでも決算書を見ると、

過剰な現金を持つ会社の多いこと。

その会社の経営者の方々には、

共通するいくつかの点があるのです。

 

⑤借入金利の相場を知らない

 

「今の低金利だったら、借りてもタダみたいなもんですよ。」

そうおっしゃる経営者がおられます。

「で、何%の金利で借りられたのですか?」と聞きます。

すると、「1%」や「1.5%」など、

今どきの低金利環境でみれば、

めちゃくちゃな高金利で借りていたりするのです。

「えぇ!高すぎますよ!」と言うと、

「いやや、以前は7%や8%だったんですから、

 それから比べたら、タダ同然じゃないですか。」

などと言うのです。

 

バブル期の銀行優位時代から比べて、

今は金利がかなり下がっているのは、当たり前です。

その頃と比べるのではなく、今の相場と比べて、

それより低く、どう借りるのか、というのが金利交渉です。

金利相場が全く真逆の時代と比べて満足しているなど、経営者失格です。

 

日本銀行が毎月発表している、

新規融資の平均金利は今、約0.6%です。

それよりも低く借りてこそ、

「低い金利で借りました!」と言ってほしいのです。

このような金利相場を知らない経営者は、

銀行からしたら、まったくもって、ありがたい客なのです。

銀行が相場よりも高い金利を経営者に提案して、

「こんな低い金利で借りれるなら、ありがたい!」

などという言葉が経営者から出れば、

「私は金利相場をまったく知りません!」

と叫んでいるようなものです。

“この経営者なら、そこそこ高い金利でも大丈夫だな。”

と悟られ、いいカモにされてしまうのです。

で、どんどん借りて、現預金が必要以上に膨張するのです。

 

金利相場を知らないのは、税理士も同じです。

先日、ある社長が顧問税理士に相談しました。

「グループ会社間でお金を貸すのに、金利をどうすればよいですか。」

すると税理士から

「銀行金利と同じくらいで、2%でお願いします。」

と言ってきたのです。それで、

「なんか高いと思うんですけど。」

とこちらに相談してきたのです。

「金利を税理士に相談しても、彼らは相場なんて知らないから、

 相談相手を間違えたらえらい目にあいますよ。」

と伝え、0.2%の金利設定にしたのです。

 

原料仕入等なら、相場を調べて交渉しているのです。

金利も同じです。低い金利で交渉し、現預金を安く仕入れるのです。

そのためには、金利の相場を知ることです。

“日本銀行 平均金利”と検索すれば、相場を見れます。

簡単です。金利が下がれば、まるごとリターンです。

リターンのある行動で、相場より低い金利を獲得してほしいのです。

 

(古山喜章)

2021年9月 2日 (木)

現金が過剰な会社の共通点 ④

「現金も在庫と同じ。過剰に持つな!」

と言い続けております。

それでも決算書を見ると、

過剰な現金を持つ会社の多いこと。

その会社の経営者の方々には、

共通するいくつかの点があるのです。

 

④銀行の環境変化を知らない

 

「銀行は簡単にお金を貸してくれない」

こう思い込んでいる経営者が、いまだにおられます。

年齢で言えば、60歳代後半以降の経営者に多いです。

その方々は、バブル期やそれ以前の銀行との取引を知る世代です。

そしてその時代に、資金調達でたいへんご苦労をされた世代、

と言えます。

 

その当時、日本経済はあらゆる面で右肩上がりでした。

需要は旺盛で、各企業は投資や事業拡大をどんどんしました。

それだけ、

資金需要が多く、銀行のお金が足らなかったのです。

不足しているお金をほしがる企業が多くあるのですから、

貸し手である銀行が優位になるのは当たり前です。

格付けなど関係なく、

銀行のさじかげんで、どの会社に貸すのかを決めていたのです。

さじかげんの判断は、銀行に協力的であるかどうか、

だったのです。

とにかく銀行に頭の上がらない中小企業の経営者が多かったのです。

 

しかし、今や時代は完全に変わりました。

お金が余っているのです。

直近公表されている7月データでも、

銀行全体の預金残高は約830兆円であり、

ここ数年、増え続けているのです。

空前のカネ余りなのです。

つまり、

銀行を取り巻く環境は、バブル期とは真逆です。

借り手が少なく、お金が余っている。

ということは、圧倒的に借り手優位の時代なのです。

 

なのに昔の感覚で、

「銀行に嫌われたらおしまい。」

「銀行からのお願いを断るわけにはいかない。」

と信じている経営者がおられるのです。

その結果、必要のないお金を借りて、

過剰な現預金を抱える状況に陥っているのです。

そのような経営者は、銀行にとっては最もありがたい存在です。

金利を下げる必要もなく、担保・個人保証も

取り放題なのですから。

 

中小企業にとって、資金調達は生命線です。

その手段のひとつとなる銀行業界の現状を正しく認識しておかないと、

中小企業は大いに損をしてしまうのです。

 

(古山喜章)

2021年9月 1日 (水)

現金が過剰な会社の共通点 ③

「現金も在庫と同じ。過剰に持つな!」

と言い続けております。

それでも決算書を見ると、

過剰な現金を持つ会社の多いこと。

その会社の経営者の方々には、

共通するいくつかの点があるのです。

 

③当座貸越契約を知らない

 

借入をしてまで現預金を過剰に抱えている理由のひとつに、

「すぐに必要な時に現預金がないと困るから。」

ということを挙げる経営者がおられます。

 

そういう方に

「当座貸越契約をすればいいじゃないですか。」と言うと、

「それ、なんですか?」

という答えが返ってくる、ということがまだまだ多いのです。

当座貸越契約というのは、

当座預金でいつでもすぐに調達できる金額を契約するものです。

5千万円の当座貸越契約をすれば、

短期借入金の扱いで、いつでもすぐに資金調達できます。

なので、当座預金の残高がマイナスになっても、

当座貸越契約の額が5000万円なら、

マイナス5000万円までは、その契約額の範囲内で対応できる、

ということになるのです。

 

使った当座貸越枠の金額は、自動的に短期借入金になります。

で、当座の口座に入金があり次第、自動的に返済してゆく、

ということになるのです。

すぐに資金が必要、というときに、

この当座貸越契約は好都合なのです。

これをせずに、普段から借入金をして現預金を抱えていると、

まず、金利が常に発生します。

 

加えて、その状態だと絶えず現預金も借入金も膨らみます。

総資産は増え、自己資本比率や総資産経常利益率など、

企業体力に必要な経営指標が軒並み悪化します。

 

そんなもったいないことをするくらいなら、

当座貸越契約を結んでほしいのです。

そのためにはまず、取引のある銀行担当者に、

「急な資金需要に対応できりょうにしたいので、

当座貸越契約をしたいのだが、どうすればよいのか。」

と要望を伝えればよいのです。

その言葉が経営者から出るだけで、

「この経営者は銀行のことをよく知っているな。」

と、銀行員はドキッとするはずです。

 

かつては契約のハードルが高いと言われた当座貸越ですが、

今は状況が変わり、すんなりと契約できるケースが増えています。

「以前に申し込んだけれども断られました。」

という経営者も、おられると思います。

しかし、それから数年以上経過していれば、

担当者も変わっていますし、何より、

銀行を取り巻く環境が変わってきているのです。

どう変わってきたかは次回に委ねますが、

過去の事は気にせず、必要であれば、

再度チャレンジし、当座貸越契約の枠を確保してほしいのです。

 

(古山喜章)

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