株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある④
最近、中小企業の株主構成の内訳に、
80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。
お元気なのは何よりなのですが、
事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、
なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。
④占い師に頼る女性経営者
ある地方で不動産賃貸業を営む、
80歳代の女性オーナー社長から相談を受けました。
「株を娘に継がせたいがどうすればよいかわからない。」
とのことでした。
その女性オーナー社長はご主人を早くに亡くされ、
相続で株式100%を得たまま、自らが社長として、
不動産賃貸業を継続されてきたのです。
とはいうものの、80歳代の半ばも近づき、
回りの経営者や司法書士から促されて、
“確かにそろそろ”と思い、株式対策の相談に動いたのです。
決算書を拝見すると、さほど大きな商いでもなく、
そのオーナーが7~8千万円の退職金を受け取れば、
株価は額面程度になる、という状況でした。
退職金の額は、
月額報酬と取締役在籍年数からみて、なんの問題もない金額です。
その後、後継者である娘に贈与&譲渡で株式を移せば、
余計な経済的負荷はなく、完了できるものでした。
その旨を女性オーナー社長に伝え、
手順を文書で示してお渡ししました。
そう難しい案件ではなく、最初に相談を促した、
他社の経営者や長く関わる司法書士にアドバイスを受ければ、
十分に対応できるものでした。
数か月後に、その女性オーナー社長を私に紹介した経営者から、
連絡が入りました。
“前にお願いした件なんですけど…。”
“どうなりました?株式はもう娘さんに売りましたか?”
と尋ねました。
“結局、そのまま何も変わらずなんですよ。”
“どうして?何かネックになることでもあるの?”
“いやぁ、言いにくいんですが…。”
となり、何があったのかお聞きしました。
すると、
“あのあと、長年いろいろ相談している東京の占い師に、
提案内容を進めていいか聞きに行ったら、
2年待ちなさい、と言われて止まっちゃったみたいです。”
ということだったのです。
「占い師に聞いた結果、売らない。」
という、おやじギャグのような結末だったのです。
こうなると、手の施しようがありません。
あと半年ほどで2年になりますが、おそらくまた、
その占い師に聞きにゆくのだと思われます。
でまた伸びると、その社長はもう90歳突入です。
これまで、占い師を頼りにする経営者は数名おられましたが、
やはり女性社長が多いです。
しかし、占い師は事業承継の専門家ではありません。
なんの知識もないのです。本人は満足できても、
その影響を受ける親族には、迷惑でしかないのです。
占いは参考にしてもいいですが、信奉するものであってはならないのです。
(古山喜章)
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