株主の高齢化が悲劇をもたらすこともある②
最近、中小企業の株主構成の内訳に、
80歳前後以上の高齢者株主が増えてきました。
お元気なのは何よりなのですが、
事業承継対策で株式を手放してもらおうとすると、
なかなか手ごわい株主になってしまうことが多いのです。
②最新の相続対策を理解できない
ある会社で、後継社長の母親である、
80代半ばの女性が40%強の株式を保有していました。
全体の3分の1以上なので、
特別決議の拒否権を持っている状態です。
「母親は経営にはまったくタッチしていないので、
拒否権を使うこともないし、
そもそもそんなこと、理解していないです。
ただ、このまま亡くなると、相続税が大変なんです。」
と、後継社長が相談に来られたのです。
その会社は総資産に占める自己資本比率が80%を
超えていて、株価が高額になっていたのです。
40%強もの株式が相続財産になれば、
相続税額が一気に跳ね上がってしまう状況だったのです。
対策として、種類株式の活用を進めることになりました。
母親が持つ普通株式を、議決権が無く、
優先配当と分散防止の取得条項を付与した種類株式に転換し、
経営に関わる他の方に譲渡してもらうのです。
社長から連絡がきました。
「図や資料を使っていくら説明しても、
この方策を理解できないみたいで、
最後には、お前の言うことはあてにならない、
て言うんですよ。」
その社長は母親との折り合いがあまりよくはなく、
株式対策もそのためにズルズルと先延ばしになっていたのです。
そのツケがやってきたのです。
「誰の言うことだったら、お母さまは信用しますか?」
と社長に尋ねました。
「私の姉の言うことなら、だいたい信用します。」
となり、お姉さまに事情を説明して、
お姉さまからお母さまに、話しをつけてもらいました。
あまりにすんなり進んだので、社長も驚きました。
「結局、誰から聞くか、ですよね。
いまだに母親は種類株式のことは全く理解していないと思います。」
とは、社長の言葉です。
80代半ばで、
経営に関わらない方に“種類株式”と言っても、
とうてい理解などできません。
内容を理解できて納得できるかどうかではないのです。
誰の言うとおりにすれば納得できるか、なのです。
そうなると、親族かどうかに関わらず、
最も信頼できる身近な人の言うことなら納得できるのです。
高齢者の株主の対策を進めるには、
そのような信頼できる人物を味方につけることが、
事をスムーズに進める要点となる場合があるのです。
(古山喜章)
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