賢い資金繰り ①
経営にはマサカの坂がつきものです。
その際にまず気になるのが、当面の資金繰りです。
どんな業界であろうと、長く経営を続けていれば、
「マサカの坂」に必ず見舞われる時が来るのです。
そのためのお金の備えは、今のうちに済ませてほしいのです。
災害は、忘れたころにやってくるのです。
①売上回収期間を縮めておく
売掛債権回収期間、という経営指標があります。
(受取手形+売掛金)÷平均月売上高=〇〇ケ月
売ったけれども、
まだ使えるお金になっていない金額が月商の何倍あるのか、
という指標です。
この数値が大きいほど、資金繰りが厳しく、
短期借入金を運転資金で借りるなど、資金調達が必要になります。
総資産は膨らみ、余計な金利も発生します。
せめて1.5ケ月以内にはしたい経営指標です。
特に、受取手形の場合など、現状は最長120日なので、
受取手形が存在するだけで、回収期間が長くなります。
なかには、
月末に締めて2ケ月後に、120日の手形で受けとる、
という会社もありました。
そうなると、売って6ケ月しないとお金が入ってこないのです。
資金繰りがよくなるわけがありません。
とはいえ、得意先の全てにおいて、回収期間が長いわけではありません。
多くの場合、特に回収が遅い、という会社が数社あり、
その会社が大きな売上高を占めていたりするのです。
ある会社で、
「受取手形をやめてまずは売掛金に変えてもらおう。
月末締め後、手形で90日を売掛金で60日にお願いしよう」
と動き始めました。
約束手形は5年後の2026年には廃止になります。
そのことも含めて文書で伝えながら、
社長みずから、先方の社長に条件変更の交渉に参じたのです。
すると、その社長が言ったのです。
「えっ、今どきそんなことになっていましたか!
それは失礼しました!
もう手形はやめて、月末締めの翌月末払いにさせてもらいます。」
と、考えていたよりも良い条件に、すんなり切り替わったのです。
あとから聞くと、
これまでにも営業担当者が先方の担当者に、
条件交渉の働きかけをしていたそうなのです。
しかし、そんなことは先方社長の耳に入ってもおらす、
うやむやに済まされていたのです。
営業担当者は、取引を切られたくない、
先方担当者は、支払い条件を悪くする報告をしたくない、
ということで、お互いに表面的なやりとりになっていたのです。
その売り先は、売上高の上位5社に入る取引先でした。
その回収期間が縮まったのです。
後日、資金繰りはどうか、社長に聞いてみると、
「いやぁ、あそこの回収が縮まっただけで、
資金繰りがいっぺんに楽になりました!
他の取引先にも交渉をしていきます!」となったのです。
「うちの業界では受け入れてもらえない」
「前にもお願いしたけど、全然ダメだった。」
等と決めつけずに、世の中は変わってきているのです。
あるいは、なれあいの交渉で済まされていたかもしれません。
マサカの坂に備えるためにも、
もう一度、回収期間の短縮に、取り組んでほしいのです。
(古山喜章)
« 利益が出すぎて困る③ | トップページ | 賢い資金繰り ② »
「財務・会計・キャッシュフロー」カテゴリの記事
- 短期借入金をしてはいけません(2023.05.29)
- 税理士を信用してはいけません(2023.04.17)
- なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか④(2023.03.10)
- なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか➂(2023.03.09)
- なぜ、貸借対照表を見ないのか④(2023.01.27)
コメント