株式はなぜ、思わぬ方向に分散してしまうのか④
“分散した株式をどうすればよいのか…。”
という悩みをお持ちの経営者が、ICOには数多く相談に来られます。
その際、買い戻す前にまず、
なぜそうなったのか、をお聞きします。
そこには、さまざまな理由が現れてくるのです。
④相続対策になると言われて…
「後継者へ上手に株式を移行させたい。」
という相談を受けると、まずは株主名簿を見せてもらいます。
そのときに、ドキッとすることがあります。
名簿の中に、“投資育成会社”が入っているときです。
何らかの相続対策を進める上で、やっかいな存在だからです。
「どうして投資育成会社にもってもらったんですか?」
とお聞きします。最も多いのは、
「いやぁ、相続対策になると言われて…。
それに、経営には一切、口を出しませんから、と言うので…。」
といったお返事です。
概ね、全株式の10%~20%程度、
投資育成会社が社長から額面で買い受けた、
というパターンです。
投資育成会社は非同族なので、額面で譲渡することができます。
その分、相続財産としての株式は減ります。
確かにその一面では、相続対策になります。
ただ、本当に一切、口を出さないかと言えば、それはウソです。
大いに口を出します。
それも、相続対策で無議決権などの種類株式を導入するなど、
定款変更で資本構成を見直すときなどは、
必ずと言っていいほど、横やりを入れてきます。
要は、進めたい施策をスムーズに進めることが、できないのです。
加えて、
「それなら会社で買い戻しさせてもらいます。」と言うと、
「その場合は時価評価でお願いします。」と返してきます。
ある社長が言いました。
「いやいや、会社が買い戻すときは額面で構いませんから、
と投資育成の担当者もその上司も言ってましたよ。」
「何か書面でも残っているんですか?」
「それはないですけど、
あそこまで言ってたんだから、大丈夫でしょ。」
となり、実際に買戻しのお願いに行きました。
すると、次のように投資育成の所長から言われたのです。
「いやあ、5年10年での買戻しは想定していなかったので、
額面の買戻しはかんべんしてください。
私たちはもっと長期のスパンで投資をさせていただいてますので。」
と、結局、元が口約束なので、なんの効力もなかったのです。
つまり、行きはよいよい帰りはこわい、
となり、投資育成会社の活用は、出口対策に困るのです。
だから、
「経営には一切、口を出しませんから。」
「相続対策になりますよ。」
という、甘い言葉を絶対に信用してはいけないのです。
(古山喜章)
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