なぜ、本業以外にお金を使うのか②
お金を使うのなら本業に使いなさい、
と言い続けております。
しかしながら、決算書を拝見すると、
貸付金や出資金などが異様に大きい金額になっている、
ということがあるのです。
②デリバティブ商品
自己資本はマイナスで債務超過、
貸借対照表の右側の80%が銀行借入金、
という、財務体質がボロボロの会社がありました。
単純な話し、
この財務状況で銀行がなぜ、お金を貸しているのか、
という状況です。
社長にお聞きすると、こう返ってきました。
「実は12年ほど前に、先代の社長が銀行から
ドル/円のデリバティブ商品を大量に買わされたんです。」
デリバティブ商品とは、先物商品ともいわれます。
変動相場のものを、ある価格で固定して購入し、
相場の変動で利ザヤを得る商品です。
もちろん、相場なので先読みは不確定です。
得することもあれば、損もするのです。
「デリバティブって、社長の会社は海外取引なんてないし、
ドル/円なんて何の関係もないじゃないですか。」
「そうなんです。
先代社長は銀行におだてられると、言われるがまま、
借金してまで、本業に関係のない商品を買ってたんです。
結局、それで10年ほど前に、大損して、
銀行から損失補填を迫られ、さらに借入金を増やして、
リスケさせられたんです。それが今も続いているんです。」
とのことだったのです。
「本業はどうなんですか?」
「本業は問題なく、この10年以上、ずっと経常利益率5%程度です。」
だから銀行は、回収余力があるとみなし、
新たな借金をさせてまで、リスケジュールを迫ったのです。
長い時間をかければ、回収できると踏んだのです。
聞くと、その先代社長の元には、
銀行支店長が毎年、誕生日に大きな花束を持って来社していたとか。
花束をもらった先代社長はご満悦で、
頼まれた商品をどんどん買い付けていたのです。
当然、その恒例行事も、損失補填の段階でなくなりました。
そしてリスケの直後、先代社長はお亡くなりになり、
現社長がリスケの残債を引き継いでいたのです。
「あと2年弱でようやくリスケ時の残債から解放されます。」
現社長はしみじみと語っておられたのです。
確かに10年ほど前、同様の被害が中小企業で多くありました。
私たちのもとにも、駆け込んでこられた経営者がおられました。
その時は、銀行が損失補填の決済を要求してきても、
ケツをまくって、のらりくらりと先延ばしにしたのです。
で、伸ばしているうちに相場が元に戻り、その時点で解約しました。
なので、新たな借金をすることも、リスケをすることも、
なかったのです。
デリバティブ商品で、確実に儲かる商品などありません。
それに、内容が複雑で、売る当人でさえ、
仕組みをよく理解していないのです。
そんな危険な商品に手を出すなど、絶対にしてはいけないのです。
特に、
銀行におだてられるのが好きな経営者が身近にいる会社は、
大いに注意してほしいのです。
(古山喜章)
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