一世代一裁判②
株式会社南ハウス(仮称)の南一郎会長(仮名)から、
役員退職金の関係で仕事を受けました。
関係性が良くない南太郎社長(仮名)宛に、
役員退職金を出してもらいたい、
併せて、自分が持っている株式を買い取ってもらいたい、
というのが、そのリクエストでした。
「そもそも、甥っ子の社長とは、どんな関係なのですか?」
南会長は大きな声ではハキハキ話されます。
「んー、一言でいって、全然性格があわんね。
僕には、一回り以上の兄がいて、もう他界してるんだけど、
その兄の息子が今の社長なんだ。
兄には一回り以上も上ということもあって、
父親みたいによくしてもらった。
この会社は、その兄から僕が託されたんだよ。
兄の息子は、典型的なボンクラで、
人望も何もありゃしない。
それは、兄もよくわかってたね。
だから、亡くなる直前のベッドで手紙を書いて、
“一郎にこの会社を託す”とか書かれてたよ。
と同時に、“息子のことも頼む“と言われて、
それで、ボンクラでも社長にして、今までやってきたってわけ。
でも、僕ももう歳だし、セカンドライフを見据えて、
そろそろ引退して、退職金もらって、って考えてるの。
でも、甥とはやっぱり関係性がよくないから、
あいつは、絶対に退職金を出さない。
だから、先手を打とうと思ってさ。」
「株式は誰がもっているんですか?」
「それが問題だよな。
株はねぇ・・・甥っ子の社長が、60%持ってるの。」
「会長、それだと、退職金の決議がとれないですね。
退職金の決議は、株主総会の普通決議、
つまり、51%が必要ですよ。」
「そうそう、それはもう知ってるんだよ。
だからね、ちゃんと弁護士も用意してるの。」
「裁判するつもりですか?」
「そうだよ!向こうが出さないっていうなら、
そうするしかないでしょ。他に方法ある?
この南ハウスという会社はね、歴史が長い会社だけど、
1世代で1裁判はしてるね。ハハハっ!」
と明るく大きな声でおっしゃる南会長でした。
(福岡雄吉郎)
« 一世代一裁判① | トップページ | 一世代一裁判③ »
コメント