「経営のミスリードにダマされるな!」への反論①
前回、「経営のミスリードにダマされるな!」のタイトルで、
武蔵野 小山昇氏の考え方とICOの考え方の違いを書きました。
すると、ある経営者から、大長文の丁重なる文章をいただきました。
仮名として、T会長とさせていただきます。
そこには、
「銀行に対するICOの考え方を100%信じると、
小山さんのいうとおり、資金面で危ないときがあります。」を冒頭に、
T会長のお考えの礎となる、様々なご体験を詳細に記していただきました。
1970年代に会社を興され、自動車系の下請け企業として、
数々の苦難を乗り越え、後進に経営のバトンを譲られたのです。
長きにわたる貴重な実務体験を正直にお書きいただき、
感謝の気持ちでいっぱいになりました。
しかし、その大変なご体験・苦難に基づくお考えに対しても、
ICOとしての考えがあるのです。
今回は、大先輩への失礼を承知のうえで、
そのことについて、書かせていただきます。お許しください。
- 普段のお付き合いがあればこそ、貸していただき、危機を乗り越えた
T会長は、バブル崩壊後、資金難に陥りました。
当時、自動車系の仕事だけでなく、輸入雑貨の商いも始められたのです。
貿易取引で商品を仕入れるには、先払いで多額の資金がいるのです。
当時の年商が150億で、必要資金は3年間で200億でした。
しかし、普段から融資のお付き合いのある銀行から借りれた、とのことです。
T会長はこのことを振り返り、
「ICOさんの言う通り、無借金のままで“200億出せ”と
銀行に言えば、どこも相手にしてくれません。」
と述べておられます。
そもそも、銀行とのお付き合いは、借りることだけではありません。
支払い、振込み、手形決済、海外送金など、
銀行の各種機能は、経営管理に欠かせない存在なのです。
年商150億の会社とそのような取引をしている銀行なら、
その本丸の目的はひとつです。
お金を貸すことです。
時代はバブル崩壊後、1990年代です。
1985年のプラザ合意後、円相場の高騰を機にバブル経済が進行し、
数年後に崩壊しました。
その経緯のなか、銀行の立場も大きく変化しました。
バブル崩壊で資金需要は激減し、
銀行に残ったのは多額の不良債権の山だったのです。
いずれの銀行も経営難に陥っていたのです。
住友銀行のラストバンカーと呼ばれた元頭取、
西川善文氏は当時を振り返り、著書「ザ・ラストバンカー」のなかで
「銀行が床の間を背にしてお金を貸す時代は終わり、
頭を下げてお金を借りていただく時代に変わった。」
と述べておられます。そのような時代背景なのです。
銀行優位の時代は終わっていたのです。
T会長の会社は自動車部品関連の会社です。
バブル崩壊の原因となった不動産業ではありません。
当時の取引銀行にすれば、
融資のつきあいがあろうとなかろうと、
財務的に問題のない状態であれば、融資をしたと思われるのです。
1行で厳しくとも、各種取引のある数行に声をかければ、
3年間で200億を調達できたのではないでしょうか。
そのような時のために、当座貸越枠があるのです。
当座貸越枠を確保していれば、
銀行には決算書を毎年提示しており、財務状況を伝えています。
日ごろは無借金でも、その枠内ですぐに資金調達できるのです。
私たちICOは、資金が必要な時のための備えを、
“日ごろから借りておくこと”と考えないのです。
“借りれるようにしておくこと”と考えるのです。
しかしT会長が“無借金だと200億は借りれなかった。”
と思われたのには、さらに根深い理由があったのです…。(続く)
(古山喜章)
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