「経営のミスリードにダマされるな!」への反論⑤
前回、「経営のミスリードにダマされるな!」のタイトルで、
武蔵野 小山昇氏の考え方とICOの考え方の違いを書きました。
すると、ある経営者から、大長文の丁重なる文章をいただきました。
仮名として、T会長とさせていただきます。
- お金のないつらさが身に染みています
T会長からのメールの締めくくりには、次のように書かれています。
「資金がないときの経営者はとてもみじめなものです。
どうしてこんな仕事を選んだのだろう、
どうしてこんなに苦しいのだろう、という後悔ばかりで、
先の考えがまったく出てこないのです。」
お金のないつらさが、身に染みておられるのです。
さらに、
「10億円を10年借りて、1年の金利が200万円なら、
それで安心が買えるなら、安いものだと思います。」
と続きます。
本当に、多くの体験されたなかでの、正直なお気持ちだと思います。
しかし一方で、10億円の負債を抱えることにもなります。
10億円を安心のために借りていて、
何らかのマサカの坂が来て、当座をしのいだとしても、
10億円の返済は残ります。
そのような事態に陥ったら、それはそれで冒頭のような、
同じみじめな気持ちになるのではないでしょうか。
前回、武蔵野の小山 昇氏の例を使わせていただきましたが、
知床事故の関連でいま、武蔵野はマスコミで非難を浴びておられます。
業績への影響も大きいと思われます。
そのようなときに、自分が銀行の立場なら、どう動くだろうか、
と考えてしまうのです。
「あの会社には、売上10ケ月分くらいのお金を余分に貸しているけれど、
このままだと回収が危ういのではないか。」
と不安になり、いわゆる貸しはがしに動くのではないか、
と思えてしかたがないのです。
「小山社長とは長い付き合いだし、いつもよく借りてくれていたから、
ほとぼりが冷めるまで、このまま貸してあげよう。
申し入れがあれば、リスケジュールにも応じよう。」
とは簡単にならないような気がするのです。
今回の一件で、銀行は態度を変えると思うのです。
雨が降ってきたから傘を取り上げる、
という対応に変わるような気がしてならないのです。
そのことを考えると、安心のためと言いながら、
多額の資金を普段から借りているのは、やっぱり危険なのです。
売上高が激減したときに、わずかとはいえ、金利の支払いが要ります。
当然、元金返済も毎月容赦なくやってきます。
そんな時のためにたくさん借りています、
といっても、本当にそのような事態に陥ると、
銀行はそんなに甘くないのです。
マズイ、となれば一気に回収にかかるのが銀行です。
平時からの銀行借入は、経営危機の真の対応にはなりません。
セーフティーネットを解約して資金を得た。
生命保険を解約して資金を得た。
経営者陣の手元資金を注入した。
別会社で貯めた資金を借りた。
上場会社の有価証券を売却して資金を作った。
等々、銀行以外のルートで調達できるようにしておくことが、
本当の危機対応だと考えるのです。
さらに、
無借金で返済原資も金利も不要な体質にしていた、
ということを付け加えたいのです。
経営危機に陥った時に、借金の返済がないというだけで、
安心感は全く違う、という経営者の声を何度も聞いているのです。
T会長からのメールには、多くのことを学ばせていただきました。
まだまだ、考え方の相違があるかもしれませんが、
改めて、感謝の言葉を述べたいと思います。
ありがとうございました。
(古山喜章)
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