たまには定款を見直しなさい②
事業承継の案件に関わる際は必ず、定款を確認します。
しかし、定款のメンテナンスは案外されておらず、
いつか作成して登記したまんま放置され、
全く改訂されていない、ということが多いのです。
しかし、
定款は会社の根幹を成す重要なエビデンス(証拠書類)です。
もう少しその内容に、敏感になってほしいのです。
②「相続人等への売渡し請求」と「譲渡制限」
平成18年、新会社法の施行時より、
“相続で株式を取得した人に対し、
会社が株式の売渡しを請求することができる”
との条文を定款に記載できるようになりました。
(相続人等に対する株式の売渡し請求)
という名称で、第8条か9条あたりに記載されています。
新会社法の制定時からの条文なので、
長らく定款の見直しをしていない会社の場合、
この条文が入っていない、ということがあるのです。
ただ、“請求することができる”というだけなので、
拒否されることもあります。
会社が株式を買い戻す、という法的効力まではありません。
それでも、この条文があれば相続人に対して、
「会社の定款の定めに応じて、株式を買い取らせていただきたい。」
と、スムーズにお伝えすることができます。
その意味において、記載しておいたほうがよいのです。
法的効力がない、という意味では、“譲渡制限”も同様です。
“株式を譲渡するには、取締役会の承認を要する。”
という条文の項目です。
この条文記載があっても、株式を別の者に譲渡することは、可能なのです。
「譲渡制限のある株式だから、その譲渡は無効だ!」
とは言えないのです。
このような場合、
譲渡が先に行われたあとで、譲渡承認請求書が会社に届きます。
“この譲渡を承認しないのなら、
会社か会社の指定する者が買い取ってください。”
との内容で届くのです。
個人だったり法人だったり。
会社としては、やっかいな者が株主になることは避けたいので、
会社が買い取る、ということになります。
で、さらにその買取価格でトラブルに発展するのです。
この数年、
これをネタにして商売をする弁護士事務所も現れています。
ここでは詳しく書きませんが、
株式に取得条項を付けて、種類株式にして登記しておく、
という手立てで、相続時の株式分散や、
やっかいな譲渡承認請求に対抗することが可能なのです。
相続や譲渡に関する自社の定款がどうなっているのか、
その法的効力はどの程度のもので対抗策はあるのか、
といったことに対して、知識をもっておいてほしいのです。
(古山喜章)
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