たまには定款を見直しなさい⑤
事業承継の案件に関わる際は必ず、定款を確認します。
しかし、定款のメンテナンスは案外されておらず、
いつか作成して登記したまんま放置され、
全く改訂されていない、ということが多いのです。
しかし、
定款は会社の根幹を成す重要なエビデンス(証拠書類)です。
もう少しその内容に、敏感になってほしいのです。
⑤発行株式の種類をどう設計するか
中小企業のほとんどは、
普通株式のみを発行する定款になっています。
しかし株式には、普通株式以外の種類株式が、9種類あります。
そしてその9種類を組み合わせてひとつの種類株式とし、
定款に記載して登記することができるのです。
無議決権株式、配当優先株式、黄金株 等など、
その名称くらいはお聞きになったことがあろうかと思います。
特に事業承継において活用価値が高いのが、
「取得条項付き株式」という種類株式です。
相続や強引な譲渡による、株式の分散を防御する役割を果たします。
例えば娘婿が社長の場合、その娘婿は1株も株式を持っていない、
ということがあります。
本人は
「いつまでも、信頼されていないんですよ。」
というものの、先代の父親にしたら、
「いやぁ、株を渡して離婚したら、株を持ったままになりますから。」
という気持ちもわかるのです。
そのような場合、取得条項のついた株式を娘婿に譲渡します。
1)役員・従業員の立場を失ったとき
2)死亡したとき
など、いくつかの条件を設定し、そのようなことがあれば、
“即日にその株式は会社のものとなる”と定款に記載し登記するのです。
そうすることで、
仮に先代の不安が的中しても、株式が分散することはありません。
離婚して、その会社の社長を続けることはないはずです。
退任することになり、取得条項に基づき、株式は会社に移行するのです。
他にも、
兄弟で株式を保有するけれども、
弟は無議決権株式にして、議決権は社長である兄に集中させる。
など、様々な形で、その会社固有の事情に合わせ、
株式のありかたを設計することができます。
ただし、発行済みの普通株式を種類株式に転換するとなると、
株主総会での特別決議に加え、全株主の同意、が必要です。
株式が分散している程、種類株式活用へのハードルは上がるのです。
だから、株式を安易に分散させないでほしいのです。
定款での株式設計によって、事業承継をスムーズにし、
株式にかかる相続税をゼロにすることも可能なのです。
それくらい、定款というものは大きな存在なのです。
将来リスクを考慮した際に、
わが社ではどのような株式の設計にしておくべきか、
改めて考えてほしいのです。
(古山喜章)
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