なぜ、貸借対照表を見ないのか➂
月次決算をすれば、毎月、
損益計算書と貸借対照表を見ることができます。
ところが、「貸借対照表を毎月見ます」
という経営者は、ほとんどおられません。
会社のお金の状況や財務体質がわかるのは、
貸借対照表なのに、見るのは損益計算書ばかり、なのです。
なぜ、貸借対照表を見ないのか?考えてゆきたいと思います。
➂比較のモノサシがない
損益計算書の場合、
売上高、原価、売上総利益、人件費、その他経費などを、
いくつかのモノサシで比較します。
前年同月対比、前年累計対比、前月対比、
月別推移、予算対比、等など。
他にも、経営者の長年の感による比較、
というのもあります。
損益計算書の数値から、
収益体質が良くなっているのか、悪くなっているのか、
横這いなのか、がある程度、つかみやすいです。
ただ、どこまでいっても、損益計算書は理屈上の数値です。
売上高が昨年同月より増えていたとしても、
回収が遅くなって使えるお金が減っていたら、大きな問題です。
しかし、そんなことは損益計算書からだけでは、
わからないのです。
月次決算の貸借対照表でも、
前年同月末日の数値が参考値として記載されている場合があります。
そういう会社は、その資料を見て経営者が、
「去年より現預金がずいぶん減っているのはなぜか?」
「長期借入金が昨年の数字とほとんど変わっていないけど、
何か新たに借入したか?」
など、その都度、財務担当者に質問をします。
財務担当も、聞かれるだろうな、というところは察しがつきます。
なので、貸借対照表に常に意識が行きます。
損益計算書しか見ていない会社は、
このようなチェックが行われません。
現預金が増えたか減ったか、
借入金が増えたか減ったか、
仮払金など、妙な勘定科目が急に現れていないか、
など、まったくわからないのです。
だから、そのような会社では、
経理担当者による不正・横領が起こりやすいのです。
お金の管理が無防備になるのです。
使えるお金の管理ができるのは、貸借対照表です。
理屈上の数値である損益計算書より、大切なのは貸借対照表なのです。
せめて前年同月との比較くらいはして、
わからないところは経理担当に聞く、くらいのことはしてほしいのです。
(古山喜章)
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