2、貯めてはいけません
会社が儲かっている指標、すなわち収益性とは、
売上高営業利益率と売上高経常利益率だと信じている方の多いのに驚きです。本当に数値に弱い経営者が多いのには驚かされます。
貯めすぎてはいけない!
何を貯めすぎてはいけないのか?
売掛金、棚卸在庫、現預金の流動資産です。
なぜ、現預金?と思われる経営者がいらっしゃいますが、これは後で説明します。
売掛金、棚卸資産は商売をする上で絶対に必要な事で、これを持たずに経営はできないとおっしゃる人が多いのです。
「先生 我々『鉄』を商品にする業種業界は昔より、手形商売、指定メーカーから在庫は押し付けられるのが業界常識ですよ!」
大阪南港近くにある鉄板、鉄加工品、重量物製品を扱う正田産業(仮称)株式会社の正田専務が不満顔でおっしゃる。
正田産業もリーマンショックの影響を受けて正に倒産に近づきつつある危ない会社なのです。
「正田専務、ちょっと待った。井上先生はわが社の売掛金の多さ、棚卸資産の多さが問題だとおっしゃっているので、売掛金商売、在庫過多が問題だとおっしゃっているんだよ!!」
横から急に発言されたのは 若き三代目の正田勝男社長(仮称)だったのです。
「我々の業界でも ライバルである九州にある岡本商会(仮称)の鉄鋼製品は現金取引でないと売ってくれないよ! あの会社には手形商売をやっていない有名会社があるよ」
正田産業が低収益性なのは管理がまずく、販売しても顧客から回収条件を示さず、相手の言うがまま。リーマンショックで市場が冷えるとたちまち在庫が増え、鉄鋼メーカーと話し合うこともなく低収益化に甘んじて従来の流れの中で商売を続けている。
調べてみると長い歴史の中で大阪湾の埋め立て地に土地、建物の倉庫を購入しており、なんとその所有者は先輩経営者の個人の持ち物で、家賃を得るためにそれら倉庫に製品を多く置いているのです。
若き三代目正田勝男社長を私の指摘に謙虚に反省し、倉庫所有者の先輩と過去の経営者との賃貸契約を切っていたのです。
業界習慣、同族問題、長い歴史の中にはとんでもない悪い貯め癖がついています。売掛金が3か月から10か月後になる驚くべき長さになっている、当然、支払いも長いものになってしまう。不況が来るたびに倒産の危機に入り、ヒヤヒヤで経営する。平時の折には時間をかけてでも短くする努力をしなさい。長いのは信用があるからなどと勘違いをしている。
在庫が多くなることもインフレ期を長く経験した古い経営者の価値観が未だに強く残ってしまって、それが正しいと思っているのです。
当然、運転資金が必要で、銀行対策も必要となり短期借入金が実に多くなってしまうのです。
経営は利幅だけではなく、回転が大切だなあと理解できない人が多すぎるのです。
(井上和弘)
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