銀行の提案に気をつけろ②
「先生、銀行からこんな提案が来たんですけど、
みてもらえますでしょうか?」
といった相談を、一年に数回は受けています。
しかし、これはいい提案だからやったほうがよい、
という内容はまず、ありません。
結局は、銀行が儲かるための提案ばかりなのです。
②新会社を作って株式等価交換しませんか
銀行からの、
「ホールディングス会社を作りませんか?
その会社で株を買い取るお金は、私どもが融資します。」
という提案は減ってきました。ところが、
先日ある会社で、銀行からの新たな提案書を見せてくれました。
そこには、
「株式等価交換を活用したホールディング会社の活用」
とありました。
これも同じく、ホールディングス会社を設立して、
その新会社が事業会社の株式を持つ形です。
かつての提案は、新会社を後継者100%で設立し、
その会社が銀行からお金を借りて、
事業会社の株式を全部買い取る、といったものでした。
今回の株式等価交換の提案では、
新会社は事業会社と同じ比率で株主に株式を発行し、
その対価として事業会社の株式を全部持つ、
ということになります。
なので、銀行からの融資は必要ありません。
しかし、事業会社と同じ比率で新会社は株式を発行するので、
新会社の持ち株比率は、かつての事業会社と同じ、
ということになります。
事業会社の株式が、先代社長90%、後継者10%、だとしたら、
事業会社の株式は、新会社が100%持つことになるものの、
新会社の株式は、先代社長90%、後継者10%、となります。
その提案をしてきた銀行担当がちょうどやってきたので、
「これではなんの解決にもならないじゃないですか?」
と言いました。すると担当者は、
「そうなんです。ただ、間接的に保有するので、
事業会社の株価は若干下がります。」
「若干なんて下がっても、たいした意味ないでしょ。」
「なので、新会社を設立したあと、社長がお持ちの90%は、
事業会社で持ち株会を作って、議決権を無しにして、
持株会へ移すことも可能です。」
というので、
「なら、最初からそうすればいいじゃないですか。
ただ、そうやっても、本当の解決にはなりませんけど。」
と答えました。
種類株式にして取得条項を付けることが必要、
というところまでは、教えませんでした。
銀行担当とのやり取りが続きました。
「この株式等価交換のスキームなら、ご心配されている、
融資の必要はありません。」
「でも、解決にならないでしょ。それに、手数料は取るでしょう。」
「手数料もいりません。ご指導させていただくだけです。」
「必要な議事録とか、会社設立の費用は?」
「その程度は、やはり必要になります。」
「でしょ。やっぱりお金はかかるじゃないですか。
それに、そんなことしてもらったら、今度融資を検討する際に、
おたくに忖度しないといけなくなるでしょ。」
「いえいえ、そんなことはしていただかなくても結構でございます。」
「そういうわけにはいかないでしょ。」
というやり取りを終え、銀行担当は帰ったのです。
当然、そんなスキームを、取り入れるはずがありません。
でも上のやり取りの途中で聞くと、
その銀行からの提案に基づいて、
株式等価交換のスキームを実行している会社が、
いくつもあるとのことだったのです。
気の毒なことです。
銀行からの提案は結局、銀行が一番得をするようにできている。
そう思っておいてほしいのです。
(古山喜章)
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