なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか➂
貸借対照表を拝見すると、
現預金が月商の2倍、3倍ある一方で、
負債に長短借入金がどっさりある、
というケースをまだまだみかけます。
「なぜ、借金をしてまで現預金を抱えるのですか?」
と聞くと、「何かあったときのために。」と言われます。
しかし、借金し続けることだけが、その対策ではないのです。
➂少人数私募債を活用しなさい
「そんなに現預金を抱えておきたいなら、
少人数私募債を発行して、
社長のお金を会社に入れればいいじゃないですか。」
と言うと、
「それって、なんですか?」と未だに言われます。
少人数私募債は、会社が発行する社債です。
しかし、銀行が引き受ける社債とは違います。
文字通り、
経営者や身内など、身近な少人数だけが引受人になれる社債です。
社債を引き受ける形で、手元にあるお金を会社に貸すことになるのです。
そのため、経営破綻時の弁済順位が低い、劣後債という扱いになります。
劣後債なので、銀行評価では自己資本とみなされます。
資本性借入金、という扱いになるのです。
小人数私募債は、銀行引き受けの社債のように、
あれやこれやの手数料は一切かかりません。
会社内部の事務処理のみです。
それに、金利は3%~5%で設定可能です。
手元にあるお金を貸す直接金融なので、
預金を集めて貸す間接金融の銀行とは、根本的に異なるのです。
それに、弁済順位が低い劣後債です。
だから、金利が3%~5%でも、問題ないのです。
引き受けるのは、個人だけでなく、法人でもOKです。
子会社に資金の余裕があったので、
本体の会社が小人数私募債を発行し、
子会社が引き受けた、というケースもありました。
そのときも、金利は5%で設定し、
引受人である子会社がその金利を受け取っていました。
小人数私募債なら、金利は外部流出せず、内部でお金が動くだけです。
それに、私募債発行会社では、金利分を損金計上できます。
要は会社ですぐに使えるお金を持ちたいのなら、
極力、外部から借りずに、自前で蓄えたものを、
そのお金にあててほしいのです。
そのために、日ごろの役員報酬を大きくしているのです。
報酬が高いのは、
経営者だけが裕福な生活をするためではありません。
「何かあったとき」には、
率先して手元のお金を出すのが、経営者なのです。
銀行に金利を払ってお金を借り、
借金を抱えているのに「これで安心できます。」
と喜ぶような経営者には、ならないでほしいのです。
(古山喜章)
« なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか② | トップページ | なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか④ »
「財務・会計・キャッシュフロー」カテゴリの記事
- 短期借入金をしてはいけません(2023.05.29)
- 税理士を信用してはいけません(2023.04.17)
- なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか④(2023.03.10)
- なぜ、そんなに現預金を積み上げるのか➂(2023.03.09)
- なぜ、貸借対照表を見ないのか④(2023.01.27)
コメント