固定金利か変動金利か ②
アメリカの金利が上がり、
日本の物価が上がり、日銀総裁が変わり、
銀行担当がささやいてきます。
「そろそろ日本の金利も上がりますよ。
変動ではなく、固定にされたらいかがでしょうか?」
そのささやき作戦に、悩まされる経営者が多いのです。
②対応するシステムがありません
「まだすぐに金利が上がることはないから、
タイボ+スプレッドの変動金利で融資条件を出してもらってください。」
と、新規融資を検討している上田社長(仮名)に伝えました。
競合する、ふたつの地銀に声をかけてもらいました。
こちらの思惑としては、良い条件の銀行に両行の条件を統一し、
それぞれの銀行から5:5程度で借りたい意向でした。
仮に、第一銀行と第二銀行とします。
ここで改めてですが、
タイボはTIBOR(東京銀行間取引金利)のことです。
銀行間では毎日、お金の貸し借りを行っています。
東京の銀行同士の貸し借りの金利相場が、タイボなのです。
大きな変動はありませんが、毎日公表されています。
その変動するタイボ金利に、固定で上乗せするのがスプレッド金利です。
上田社長から回答がありました。
「第一銀行は、タイボに対応するシステムがないから、
タイボでは条件提示できない、と言ってきました。
固定でどうでしょうか、と言ってます。」
となり、返答しました。
「いやいや、上田社長、それは絶対にウソですよ。
他の顧問先で、第一銀行でタイボ+スプレッドで借りている会社が
現実にありますから。」
「そうなんですか!」
「大ウソもいいところですよ。」
「そのことを担当に言ったほうがいいでしょうか?」
「いや、それより、第二銀行からの回答は?」
「タイボ+0.3のスプレッドでどうですか?と回答がありました。」
「じゃあ、その条件を第一銀行の担当に伝えて、
“できないなら全額、第二銀行から借りる!”と言ってみてください。」
「わかりました!」
2週間後、上田社長から電話が入りました。
「先生、傑作です。第一銀行の担当から、
“うちでもタイボにシステム対応できるようになりました!”
と言ってきました。
先に聞いている事実を知っているだけに、笑いそうになりました。」
「でしょう。銀行なんて、そんなものですよ。
固定金利にして、少しでも金利を上げたかったんですよ。
で、スプレッドは?」
「0.3で、第二銀行に合わせてきました。」
「そうでしょ。結局、貸す先がないから、融資を全額、
第二銀行に取られるのは、なんとしても避けたかったんですよ。」
「どうすればいいでしょうか?」
「4:6で、第二銀行を多めに借りましょう。
第一銀行の担当が文句を言うなら、
“おたくが元もとタイボを隠して固定にしようと企んでたのは、
わかってるんですよ。”
と、言ってやってください。」
「わかりました!」
となり、交渉は無事に進んだのです。
銀行はいま、
あの手この手で固定金利の融資をしようとしかけてきます。
が、銀行のそのような思惑には、安易に応じないでほしいのです。
(古山喜章)
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