特別損失を活用しなさい
先日、3月末決算の会社の仮決算書を拝見しました。
その会社は卸売業です。
経費内訳をみると、電気代が前期に比べて約22百万円、
増えていました。
社長に聞きました。
「設備は特に増えていないので、この22百万円は、
冷蔵倉庫とかの従来の電気代が値上がりで増えた金額ですよね?」
「そうです。特に設備は変っていません。」
「ならば、この22百万円は、価格高騰によるものとして、
前年との差額をそのまま特別損失に計上してください。」
「そんなことできるんですか!」
「特別損失は、例年に比べて特別な費用だと、
経営者が判断した費用です。特に法的な決まりはありませんよ。」
「そうなんですか。
でも、勘定科目はどうすればいいでしょうか?」
「“その他特別損失”としてください。」
「わかりました!それだけで営業利益と経常利益が22百万円増えますね!
ありがとうございます!」
この一年間、電気代はどことも、想定外の高騰です。
設備の稼働に変化がなくとも、1.5倍以上になっているはずです。
このような費用こそ、特別損失なのです。
「値上がり分はどうやって計算すればいいですか?」
と聞かれたこともあります。
「前期と比べて、稼働している設備に大きな変化がないのなら、
単純に前期との差額を特別損失にしてください。」
と申し上げております。
「銀行に聞かれたら、どう説明すればいいのでしょうか?」
と質問される方もいました。
「会社の経営判断で電気代の値上がり分は特別損失にしました、
と回答すれば十分ですよ。」
と申し上げております。
反対した税理士も、今のところは聞いておりません。
「税理士に言ったら、“なるほど。”と言われました。」
という答えばかりです。
先に紹介した会社は、卸売業です。
多くの在庫を抱えて、回収には時間がかかる商売です。
常に資金繰りが厳しく、
銀行からの資金調達が必要となる機会が多いです。
銀行は、営業利益、経常利益を重視します。
「先生、銀行が特別損失の中身を知ったら、
この営業利益は違うんじゃないか、とか思わないでしょうか?」
と心配される経営者がおられます。
銀行では、会社の格付けをするのは、審査部です。
決算書は、審査部に回され、その部署の人が数値を入力してゆくのです。
特別損失の中身など、その入力する人には、関係ないのです。
担当者が特別損失の内容を聞き、容認できるのなら、それでOKです。
銀行担当者にしても、担当している融資先の格付けがよいほうが、
融資案件を通しやすいのです。
融資が多いほど、銀行員としての成績が上がるのです。
間もなく決算が確定する、という会社が多いと思われます。
特別損失に計上できる、例年には発生しない特別な経費や、
想定外に値上がりした費用はないか、など再度確認してください。
そうするだけで、
営業利益、経常利益の金額を増やす事ができるのですから。
(古山喜章)
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