B/S(貸借対照表)の見方 大きな勘違い⑤
経営者の多くは、
B/S(貸借対照表)の見方がわかりません。
それなりに理解されている経営者でも、
よくよく話していると、
「いやいや、それは違いますよ。」という、
大きな勘違いをされていることが、あるのです。
⑤総資産回転率が2回転しています。
総資産回転率という経営指標があります。
年間売上高 ÷ 総資産の金額 = ○.○回転
といった計算式です。
投じた資産でどれだけの売上高を計上したか、
という指標です。
数字が大きいほど売上高に対する投資効率が良い、
ということを意味します。
「うちは総資産回転率が2回転していますよ。」
と誇らしげにおっしゃる社長がいました。
「ところで御社はどのような業種ですか?」
とお尋ねしました。
「うちは人材派遣業です。」
「そうですか。
社長、人材派遣業ならサービス業ですから、
総資産回転率は5回転以上であってほしいのですよ。
2回転では、まだまだですよ。」
「えっ、5回転ですか?
サービス業の目標はそんなに高いんですか?」
とおっしゃられました。
業種によって、必要な資産は異なります。
メーカーなら在庫や機械設備が必要です。
小売業なら、在庫や店舗の内装設備が必要です。
病院なら、建物や医療機器が必要です。
人材派遣業の場合、在庫も機械設備も土地も建物も、
必要な資産はほぼありません。
だから、5回転は目指してほしいのです。
なのに2回転、というのは何か自前で持たなくてもいいものを
持っているのです。
その人材派遣会社の貸借対照表を見せてもらいました。
「固定資産に建物があるじゃないですか。
これが回転を2回転にしてしまっている原因ですよ。」
そう言うと、社長が答えました。
「これは本社ビルですね。
派遣の人材を確保するのに持ちたかったんですよ。」
人材派遣業で、本社ビルを自前で持つ必要はありません。
人材確保のためと言うのなら、
賃貸でグレードの高いビルに入ればよいのです。
資産が増えれば、負債も増えます。
その人材派遣の会社は、建物がある分、
負債に長期借入金があったのです。
総資産が増えると、自己資本比率も下がります。
総資産経常利益率(ROA)も悪化します。
長期借入金があるぶん、金利も払います。
何もいいことがないのです。
小売・外食:3.3回転、メーカー:2回転、卸売業:2.5回転、
建設業:2回転、サービス業:5回転、ホテル、病院:1回転
といった数値で、
目指すべき総資産回転率は、業種によって異なります。
自分たちの業種は何で、何回転を目指すのかを理解して、
現在の数値を振り返ってほしいのです。
(古山喜章)
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