事業承継税制だけはやめなさい②
今年も多くの経営者から聞いた言葉が、
「うちの税理士からは事業承継税制を勧められています」
というものです。
株価が高騰している会社であれば、
後継者への株式承継は経済負荷が大きく大問題です。
しかし、多くの経営者は事業承継税制に不安を感じています。
だから、勧められていることを私たちに伝えてくるのです。
②株式を担保として差し出すことになる
事業承継税制の納税猶予を受けるには、担保が必要になります。
「何に対する担保ですか?」と聞かれることがあります。
猶予される納税額に対する担保です。
納税猶予される者が対象なので、
株式を引き継いだ後継者が担保を差し出すことになります。
この担保が必要、ということが、
事業承継税制のなかであまり大きく取り扱われていません。
この税制の申請者にとって大きなデメリットとなるからです。
だから国は声を大きくして言いたくないのです。
税理士でさえ知らない方がおられます。
「先生、この制度は担保が必要になるでしょう。」
と言うと、
「そこまで細かいことは、私は把握していないが、
うちのスタッフは把握していますよ。」
と言った税理士がいました。
“どこが細かいことやねん!”と言いたくなるのです。
要は、納税猶予の額に見合う担保の提示が必要なのです。
担保となるのは、「有価証券、不動産等」とされています。
多いのは、
後継者が会社の株式を担保として差し出すケースです。
後継者には、株式以外、そう大きな財産などないからです。
昨日書いたとおり、事業承継税制は終わりなき猶予です。
なので、株式以外のものに担保を交換しない限り、
延々と自社の株式を税務署に担保にとられたまま、
ということになるのです。
担保から外れるのは、事業承継税制の認定が取り消しになり、
猶予されていた税金を払ったあとです。
結局、「猶予」という名の税務署に対する「借金」なのです。
だから、猶予期間には金利もつきます。
いま現在では約0.7%前後、と言われています。
事業承継税制を受けて数年後に認定取り消しになれば、
猶予されていた税金と利息を、
10カ月以内に払わなければならないのです。
これはかなり大きなリスクです。
「うちの税理士先生が勧めるから。」程度の理由で
このようなハイリスクの制度を採り入れないでほしいのです。
お勧めする税理士が、リスクの詳細をどこまで把握しているのか、
まずは確認してほしいのです。
それでこの担保のことが出てこなければ、
よく理解せずに事業承継税制を勧めている、と考えて間違いないのです。
(古山喜章)
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