少数株主からの買取請求を阻止せよ!①
“非上場会社の少数株主のお悩みを解決します!”
といった弁護士事務所の新聞広告を見る機会が増えてきました。
“その株、高く買ってもらえますよ”というわけです。
中小企業には、株式の数パーセントを保有している、
いわゆる少数株主が存在する、という会社が山のようにあります。
そこに商売のタネを見出した弁護士事務所が現れてきたのです。
①取締役会の譲渡承認では守れない!
新聞広告を見た少数株主からの買取要望があれば、
それを受けた弁護士事務所は、
株式発行会社に“株式譲渡承認請求書”を発行します。
「A氏が保有する御社株式を一般社団法人Bへ譲渡しますので、
承認をお願いします。」
といった内容です。
ほとんどの経営者はこう言います。
「うちは定款に、
株式を譲渡するには取締役会の承認を要する、
と書いてあります。
そんな要望、断ったらいいじゃないですか。」
しかし、これでは株式の譲渡を守り切れないのです。
弁護士事務所から届いた“株式譲渡承認請求書”には、
このように書かれています。
「この譲渡請求を承認しない場合は、
会社が買い取るか、他の買主を指名下さい。
2週間以内に回答がない場合、
この譲渡請求は承認されたこととなります。」
会社法には、「株式譲渡自由の原則」という条文があります。
そしてそこには、こうも書かれています。
「会社が譲渡を承認しない場合、会社が買い取るか、
指定買取人による買取を求めることができる。」
この期限が、「譲渡承認請求」が届いた日から2週間以内、
なのです。
少数株主からの依頼を受けた弁護士事務所は、
会社法の法的措置を通じて、正当な手続きで攻めてくるのです。
このこと自体、違法な事ではないのです。
定款に書かれているのは、
取締役会での承認が必要、ということだけです。
売却できない、とは書かれていないのです。
会社は、少数とはいえ、
知らない相手に株式譲渡されるのは避けたいです。
なので譲渡承認請求が届けば、
ほぼ、会社が買い取る、という選択をします。しかし、
その時の買取価格を、弁護士事務所は原則的評価、
つまり、時価評価で求めてきます。
株価が高い会社はかなりの高額になるはずです。
その高額買取による成功報酬を見込んだ、
弁護士事務所の新たな商売なのです。
とはいえ、備えとなる策はあるのです。
法的措置で攻めてくるなら、
こちらも同じく法的措置で対応すればいいのです。
それが種類株式のなかの、「取得条項」なのです。
(つづく…)
(古山喜章)
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